2011年12月26日月曜日

一般意志2.0に漂う素人臭

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東浩紀氏と言う現代思想の専門家がいる。批評家・作家と言う方が良いのかも知れない。最近、氏が「一般意志2.0」を提唱しだした。

著名人の最新作なので、精神科医の斎藤環氏などの書評は色々出ている(朝日新聞社の書評サイト)。ウェブ学会の動画などで、東浩紀氏の説明も見る事ができる。

それらによると、「一般意志2.0」は、フランスの思想家ルソーが提唱した概念である「一般意思」を、インターネット上のデータから特定アルゴリズムでロボットが機械的に汲み上げ、それを政治に反映させようと言う事のようだ。ソフトウェア技術者から見ると、「一般意志2.0」は素人の妄想にしか思えない。

まず、ルソーが主張した「一般意思」が存在するか否かが分からない。「一般意思」は有権者全員と意見を相違する可能性もある、浮世を超越した何かだからだ。人々が好き勝手な思いで何かを主張しているソーシャル・ネットワークから、それら全てと相反する可能性もある「一般意思」を抜き出そうと言う発想に無理があるだけではない。「一般意思」の ─ 情緒的な記述ではなく ─ 数理的な特性が分からない以上、ロボットが計算した「一般意思」が本当に「一般意思」なのかが分からない。

次に、「一般意思」の特性が分かっているとして、コンピューター・ネットワーク無しの、例えば既存選挙制度で「一般意思」が取得できない理由が分からない。膨大な計算量で人手では実現できない可能性はあるが、アルゴリズムが提示されていないとそれも評価できない。

細かいことを言うと、人々の選好を集計し、社会的なルールを適切に反映させる方法を長い間研究してきている社会的選択論と言われる分野との関係も分からないし、民主制度を支える一方の柱であるジョン・スチュワート・ミルの人権概念もどこかへ行ってしまっているようだ。「全体意思」や「人権」は、「一般意思」とは関係ないと言う事なのであろうか。

現代思想は専門外だし、興味はもてない。しかし、「一般意志2.0」にはテクノロジーの単語をついばんで、中身を理解しようとしない何かを感じる。具体的な最終目標を設定しないで、データベースを分析するアルゴリズムが開発されると言っているわけで、それは本当に仕様無きコーディングだ。

要するに、「一般意志2.0」は無闇にパソコンすげーって思っている人の発想なわけで、実務的なモノでは決してない。斎藤環氏がSFと指摘しているが、空想科学小説的な何かを熱く語れる東浩紀氏に、強い違和感を感じざるを得ないのはプログラマの性なのであろうか。そもそもオライリーが作ったマーケティング用語Web 2.0を想起させる命名で、使い捨て感があるコンセプトだ。

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