2010年7月28日水曜日

エタノール燃料について知っておくべき10のこと

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一時、米国ブッシュ政権のときにバイオ・メタノールが注目され、その後は製造最大手のVeraSun社が経営に行き詰ったことなどから最近は注目度が低いが、ブーム後も需要が拡大しているらしいので、その基本的な特徴を10項目ほど、おさらいしておこう。

1. 生産量・消費量は年々と増加している。

以下の図を見れば明らかだが、燃料用エタノールの生産量は年々と増加している。ブッシュ政権がバイオ・メタノールの保護・育成を打ち出したのは2005年なので、 それ以前から生産が増加している。

なお、上図の2008年以降は予測値だと思われる。

2. 燃料としてはガソリンに混ぜて使う。

現状ではエタノールをガソリンに混ぜて、ガソホールと呼ばれる自動車の燃料にしている。米国では配合比率によって、E10(10%)、E20(20%)、E30(30%)と呼ばれており、E10にペンタンとバイオディーゼル(脂肪酸メチルエステル)を今後したE10AKという種類もある。ブラジルでは、季節によって20%~25%の配合比率で用いられている。

航空燃料への応用なども試みられており、今後は色々なエタノール添加燃料が一般的になるかも知れない。また、燃料電池のエネルギー源にもなるため、モバイル機器の発電等にも応用が検討されている。

3. ブラジルでは昔から、米国では近年急激に生産を拡大している。

2000年にはブラジルでは106億l、米国では76億lのバイオ・エタノールが生産されていたが、2009年にはブラジルが190億lで米国が246億lと、特に米国で急激に生産が拡大している(世界各国のバイオエタノール生産量)。原油価格が上昇して代替エネルギー需要が高まったことと、米国で補助金がつけられた事が主な要因だと思われる。

4. トウモロコシやサトウキビが主な原料。

化学的にも作れるが、全体としては醸造過程で生産されるものが9割以上と多い。ただし醸造過程と言っても、国と工場の設置時期で方法が異なる。

ブラジルの工場では、サトウキビを原料としており、砂糖と有水エタノールの両方を生産しており、生産量の調整が行える。このため、砂糖の価格が上昇すると、エタノールの生産量が低下する減少が発生する。なお、製造原価は$0.23/lと、米国より安い(農畜産業振興機構)。

米国の工場ではトウモロコシを主に原料としている。古い工場はウェットミルと呼ばれる方法で、澱粉、バイオエタノール、コーングルテンフィード、コーングルテンミール、コーンオイルを同時に生産しており、これらの間で生産量の調整が行える。新しい工場は、ほぼエタノール専業で、DDG(ジスチラーズ・ドライド・グレインという家畜のタンパク源になる副産物が取れる(農畜産業振興機構)。製造コストは$0.29/lと、ブラジルより高い。

5. 農産物の価格や生産量と連動する。

エタノールの増産は、原料のトウモロコシやサトウキビの需要拡大になるだけではなく、トウモロコシが大豆やオレンジなどの耕作地からの転用になっているため、トウモロコシの増産を通じて、他の農産物の供給を低下させる効果がある。

どの程度連動するのかは良くわかっていないが、2005年の時点で米国のトウモロコシ生産の14%がバイオ・エタノール生産に使われている。2015年には31%になるのでトウモロコシの大口需要がエタノール燃料になるのは間違いない。バイオエタノールの生産量は、トウモロコシの価格には強く連動し、トウモロコシを飼料として使う家畜や、トウモロコシと作付が代替関係ある農作物とも長期的には連動する。

なおエタノール用のトウモロコシは、飼料用のフリントコーンやデントコーンとなるので、食用のスイート・コーンやピュアホワイトとは異なる品種になるので、短期的にはエタノール燃料の生産量で影響する範囲は限られている。

6. 新しい原材料が研究開発されている。

トウモロコシでエタノールを生産するのは経済性が低いので、代替作物への注目が集まっている。まず、米国でトウモロコシの代替作物としてスイッチグラスが注目されている。成長早く、肥料が少なく、耐干性、病害虫抵抗性があるので、手間隙がかからず採算性が大幅に増すらしい。

また、従来の砂糖生産量を維持したまま、バイコ・エタノールを5倍生産できる新種のサトウキビが開発された(西日本新聞)。ブラジルで広めたら年間1000億lの生産も夢ではない。トウモロコシやサトウキビは既存品種の改良も行われて行くであろう。

さらに、廃材のセルロースが、究極のエタノール原料として期待されている。まだ基礎技術の開発段階だが、植物廃材はもとより、建築廃材や生ゴミからエタノールを製造したとか、廃材の分解に必要となるセルラーゼの製造コストを大幅に下げたとか頻繁にニュースが飛び交っている。どの技術が生き残るかは分からないが、活発な研究開発が行われているのは確かだ。

7. 熱量は30%落ちるが、アンチノック性に優れる。

エタノールはガソリンに比べて熱量は30%落ちるが、アンチノック性に優れるのでエンジンの燃焼温度を高く保つ事ができる。なお、エタノールを混ぜると燃費が良くなると言うレポートもあるが、それは補助金の影響が大きい。

8. 今のところ環境に対して、費用対効果は低い。

気候変動枠組条約では「カーボンニュートラル」として位置づけられ、CO2排出量には計上されない。しかし、米国のトウモロコシを使ったエタノール生産は、生産するエネルギー量よりも、生産にかかるエネルギー量の方が多いという指摘もある(TIME)。米国の生産量が大幅に増加したことから、ここ10年間でエタノール燃料は環境破壊型のエネルギー資源になっている。ブラジルにしても、エタノール需要の拡大がアマゾン川周辺の原生林の農地転用を加速していると言われており、環境にやさしいとは言い切れない。

他にもバイオ・エタノールのCO2削減効果は低く、バイオ・ディーゼルの方がバイオ・エタノールよりもましという話もあり(Hill, Nelson, Tilman, Polasky, Tiffany(2006))、生産や流通の効率性だけではなく、ガソリンの代替品として適切かどうかという議論もあるようだ。

9. 非人道的なエネルギー資源

新技術なしでのバイオ・エタノールの増産は農産物価格を押し上げることから、食糧難の貧困層には致命的な影響が出る可能性がある(Economists)。

10. 産業保護されてきたが、今後は不透明。

ワシントンポスト誌によると、米国では補助金の効果で3.79Lのガソリンをエタノール燃料に置き換えるための納税者の負担は$1.78になっており、CO2排出量を1t減らすのに$750かかる計算になっている。また、事業者に毎年のエタノール燃料の利用増を義務付けている。米国はエネルギー自給率の向上も目的としているので、経済性のみを追求しているわけではないが、少なくともワシントンポスト誌では補助金の延長をしないことを主張している。特に米国のバイオ・エタノール政策は、環境面や経済性で問題のある施策なので、今後も同様の産業保護がされていくかは不明だ。

まとめ

環境にやさしくなく、また非人道的な燃料であるバイオ・エタノールであるが、技術革新によってはこれらが満たされる夢の燃料になる可能性があると言うのが現状のようだ。現状は自動車用燃料としてバイオ・エタノールが利用されているが、電気自動車の普及が予測されているので、この用途では大きな普及拡大はしないと考えられる。しかし、送電線が無い地域での活動など、内燃機関が適した動力源になる状況は多々ある。そういった状況での石油依存を下げると言う意味では、バイオ・エタノール(とバイオ・ディーゼル)は重要な代替エネルギーになりえるが、現状でトウモロコシ由来のバイオ・エタノールは多々問題がありそうなのも事実。補助金をつけ利用の義務化に至ったのは、いささか早急な施策であった可能性は高い。

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