2010年6月19日土曜日

2010年参議院選挙のマニフェスト

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民主党の政権奪取から半年以上が過ぎて、7月に初めての国政選挙になる参議院選挙が行われる。

参議院なので、改選議席数は半数の121で、民主党は単独過半数になる60議席以上を目指している。現在の民主党の議席数は116議席で過半数に満たないため、国民新党の影響が強く出ているが、もし単独過半数をとれれば政権運営能力が飛躍的に高まると考えられる。逆に与党側が過半数を割り込めば、立法能力が大幅に無くなる。

国政選挙は日本を左右する大一番なので、選挙に行く準備として、与野党の共通点・相違点を確認していこう。

1. 共通するマニフェスト

マニフェストとは、本来は色々な立場で意見が分かれる物事への立場の表明だ。今回の選挙で民主党と自民党で、共通する項目は多々出てきた。争点にならないなら重要ではないと思うかも知れないが、与野党が今後の国政を国民に宣言するという意味で大きな意味を持つ。

  1. 消費税は、10%で共通。自民党の谷垣氏の持論だが、民主党も賛成するに至ったようだ。
  2. 外交は、親米協調路線。
  3. 議席数は、民主党が120議席(参院40、衆院比例80)削減、自民党が段階的に6年間で222議席削減。
  4. 法人税率は、民主党が引き下げ(中小企業向けは18%から12%)、自民党が20%台に引き下げ。
  5. 公務員人件費は、2割削減で共通。

与党と最大野党が共通したので、以上は修正はあっても次の国会で可決されるべき法案となった。それぞれ、どの程度の妥協をするかがポイントになる。

2. 違いがあるマニフェスト

何項目か違いがあり、日本の社会を大きく変える可能性があるものも多い。

郵政改革法案
今回、民主党のマニフェストで一番大きなトピックは、実は郵政改革法案である。国民新党の亀井代表が推し進めてきた案で、ゆうちょ銀行の預金額の上限を2倍の2000万円い引き上げ、かんぽ生命保険への加入限度額を92%、2500万円に引き上げ、持ち株会社として分割された郵便事業と金融事業を、郵便事業の下に金融事業を置く体制に置き換え、政府の出資比率を引きあげる法案だ。小泉政権時の郵政改革法案を大幅に後退させる案で、金融部門における政府の関与が大きくなり、金融の自由化に逆行するためWTOで問題になっている。
夫婦別姓法案
社会における家庭像なので、世相を反映しているかがポイントになる。2003年の調査では賛成派は39.4%で増加傾向だったので、7年間で世論が変化したかが注目される。
外国人地方参政権付与法案
日本に永住している在留外国人は総人口の1.74%の222万人弱で、そのうち永住者は41%である。在留外国人は中国国籍が最も多く、次に在日朝鮮人が多いが、永住者となるので主に在日朝鮮人に選挙権を与えるかがポイントになる。地域によってはその比率は高くなり、影響は大きいかも知れない。朝日新聞、毎日新聞の世論調査では過半数が賛成しているようだが、産経新聞・FNNの合同調査だと40.5%で反対の46.7%を下回っている。
子供手当て
児童手当の代わりに導入され、あわせて財源として扶養控除・配偶者控除廃止も検討されており、中低所得の家計には一番身近な問題である。子供手当てに関しては、3月の楽天リサーチでは賛成27.6%、反対45.5%となっている。

3. いつの間にか消えるか変更されたマニフェスト

与党・民主党の2009年のマニフェストの中で、今回、当面は保留を含めて、消えるか変更された項目が幾つもある。与党が選挙後にマニフェストを変更するのは、政権担当能力の欠如である可能性が高いので、選挙民は十分に納得できるか考える必要がある。

  1. 消費税の凍結が、消費税率アップに変更。
  2. 子供手当ての支給額を、当初予定の半額である1万3000円に固定。
  3. 高速道路の無料化は、区間を限定に変更。
  4. ガソリン税の暫定税率を、廃止から存続に変更。
  5. 後期高齢者医療制度を、廃止から存続に変更。
  6. 警察の全ての取り調べの録画。

世論の強い反対、財政的な問題、財界側からの要請があったものが多いが、今まで明確な議論が無かった「警察の全ての取り調べの録画」が消えた理由は説明する必要があるだろう。

4. 少数政党の政策

2大政党と言っているが、実際は他にも選択肢があるので、少数政党のマニフェストも大雑把に見ていこう。

渡辺喜美氏率いるみんなの党は選挙公約で、当面の消費税アップ反対・法人税減税・郵政民営化の推進・官僚管理の強化・予算管理の強化(埋蔵金の発掘)・議員数削減(衆院180減、参院142減)・社会保障番号の導入などを示してる。前の2つが民主・自民との大きな差だが、財政の切り詰めがこれ以上可能か、どの程度可能かは議論の余地が残るかも知れない。

亀井静香氏率いる国民新党は郵政改革法案には賛成だが、消費税アップには反対だ。

舛添要一氏率いる新党改革は、官僚管理の強化・憲法改正をあげているが、具体的性は良くわからない。

社民党は、社会主義政党らしく、親米協調路線の放棄と、所得税・相続税・法人税のアップ資産課税・環境税の導入、官僚管理の強化を訴えている。脱原発・貿易自由化協定への反対も明確に示しているなど、民主・自民とはかなり異なる姿勢となっている。

共産党は、消費税増税・法人税減税に反対しており、社会保障の充実を訴えている。

民主と自民の主張が最も近く、その間をとるような少数政党が無いのが興味深い。

5. 本当に議論しないといけない点

まずは、メカニズム・デザインを考えるべきであろう。例えば「ゆうちょ銀行」の政府関与を強めて、その預金量を増やしたら、どんどん国債や地方債を購入する可能性がある。これは財政規律を緩める可能性が高い。つまり政府赤字が拡大する。民間金融機関なら収益性が制約になるので、低金利の政府債は一定以上は購入しない。しかし、保有資産が制限されているゆうちょ銀行は、既に資産の80%超が政府部門の債券だ。郵政改革法案で、ゆうちょ銀行の経営行動がどう変わるかを判断する必要があるであろう。

また、誰が負担を担って、誰が便益を得るかを良く考える必要がある。例えば子供手当てや消費税は、逆進性が強い政策だ。つまり、低所得者も高所得者も等しく扱われるので、所得再配分機能がない。結果的に、従来よりも貧乏人が苦労することになるので、この点が良識的に妥当なのかは考える必要がある。

おわりに

選挙前に具体的な政策をあげるようになったのは、日本の民主主義の発展と言えるのかも知れないが、やや選択肢が不足している感じは受けた。税収増加が必要なのであれば、消費税の増税賛成、法人税の減税反対の選択肢も自然であるが、その主張をしている政党は無い。微妙な違いだとメッセージ性が薄いと思われているのかも知れないが、有権者の政治的信条にあう政党が十分にあるかは疑問だ。選択肢を提供する意味で、もっと多様な政党があっても良いとは思う。

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