歴史学者の舌禍事件の余波かTwitter発の概念「負の性欲」への言及が増えていたのだが、この用語を広めた白饅頭こと御田寺圭氏のエッセイ「「負の性欲」はなぜバズったのか? そのヤバすぎる「本当の意味」」に気になるところがあったので指摘したい。「負の性欲」でツイフェミの振る舞いは説明できない。
2021年3月28日日曜日
リベラリズムの倫理を批判し共同体主義を説く本『これからの「正義」の話をしよう』
先日、ネット論客の青識亜論氏が『これからの「正義」の話をしよう』に言及していた。NHKのテレビ番組「ハーバード白熱教室」で日本での知名度が上がった、ハーバード大学のサンデル教授の著作。書いてあることを我田引水してきて妙な誤解が広まらないか不安に思って、適時苦情を申し立てられるように中身をチェックしたついでに感想を記しておきたい。
2021年3月24日水曜日
徳倫理は専門家にお任せと言う意味でのエリート主義ではないよ
社会哲学者の稲葉振一郎氏が新著の宣伝で「権威主義はびこるダークな世界で、エリート主義な「徳倫理学」が流行る「意味と危うさ」」と言うエッセイを書いているのだが、徳倫理が専門家にお任せすればよいと言う意味でのエリート主義になっていて奇妙な話になっている。エリート主義と評されることがあっても、それは美徳を知るエリートでないと幸福になれないと言う意味で、職業的専門家依存主義ではないから。
2021年3月16日火曜日
旧日本軍の慰安所は未成年者を働かせていたので醜業条約違反と言う主張は無理がある
日本軍の慰安所に21歳未満の朝鮮人女子がいた事を理由に、婦人及児童ノ売買禁止ニ関スル国際条約(以下、醜業条約)違反だったという主張をネット界隈で見かける事がある。醜業条約では通告した地域のみが条約の適用範囲で植民地と占領地は通告しなかったわけで適用外になりそうだが、日本軍が設営した慰安所には内地の法律が適用されるので条約に従わなければならなかったと言う主張なのだが、そのような法的解釈が出来るかは分からない。
2021年3月4日木曜日
朝鮮人慰安婦に関するラムザイヤー論文の『サンダカン八番娼館』の説明について
朝鮮人慰安婦に関するラムザイヤー論文(Ramseyer (2021))で、『サンダカン八番娼館』を不正引用していると言う批判があるのだが、批判されている箇所のすべてが批判どおりとは言えないので指摘しておきたい。なお、朝鮮人慰安婦と『サンダカン八番娼館』のおサキさんの類似性について説明がないし、『サンダカン八番娼館』に関する部分も無罪とは言いがたいので、ラムザイヤー氏を擁護する気はないので悪しからず。
2021年2月25日木曜日
ジェンダー社会学者のダメなところが詰まっている『炎上CMでよみとくジェンダー論』
ネット界隈で表現物に関する言い争いは多く、ジェンダー社会学者の議論の雑さにはあきれる事が多い*1のだが、出版物だともう少しマシかなと思ってジェンダー社会学者の瀬地山角氏の『炎上CMでよみとくジェンダー論』を手にとってみたのだが、同じように議論の進め方がダメだった。炎上とは何かを定義し、その定義でどの広告が炎上したと言えるのか説明し、なぜ個々のCMが炎上したのか批判者のSNSの投稿などから分析した上で、規範的な議論を展開すべきなのだが、まったく出来ていない。
2021年2月20日土曜日
従軍慰安婦に関するラムザイヤー論文への批判の奇妙な点
従軍慰安婦に関するラムザイヤー論文(Ramseyer (2021))に大きな瑕疵があると、歴史学者のグループ(Stanley et al. (2021))が批判していて話題になっており、確かに文献の参照が恣意的と言うか、参照する文献を間違っているようなのだが、ラムザイヤー論文の核となる前提への批判は奇妙なものになっている。
2021年2月19日金曜日
『アメリカの政党政治 — 建国から250年の軌跡』で、アメリカの分断を理解しよう
ここ数年、よく取り上げあられるが意味が分からないものに、「アメリカの分断」がある。昔から貧富の格差が大きくゲーテッドコミュニティがあるような国で、いまさら人々の間の分断が問題になるのが不思議だったのだが、アメリカで今、進んでいる分断の意味が分かる本が出ていた。アメリカ政治史が専門の岡山裕氏の『アメリカの政党政治 — 建国から250年の軌跡』は、建国から現代までの政党政治の概要が分かる本だが、それだけに現在が過去とどう違うか分かりやすいものとなっている。