肋骨が浮いており、腹回りに肉はついておらず、食欲がわかず食べも嘔吐する、体重計にのった上で痩せたと言及している少女が巨乳のままであるマンガが、痩せたら乳房も縮む、摂食障害への誤解を生むと非難されていた*1。摂食障害による激痩せ女性の画像を見ると、確かに性的魅力は維持していない。
1. 誤解を招く描写はある
作者の三稜釜次郎(@rokumei1129)氏は摂食障害を描いていない、自分の創作にはフィクションが含まれると反論しており、批判に不満があるようだ。しかし、摂食障害を連想させる描写になっていたことは多くの人々の反響から間違いなく、摂食障害でなくても皮下脂肪が落ちて肋骨が浮くほど痩せたときに乳房が萎まないのはリアリティがない描写だと言うのは事実だ。
2. 生活や健康に関わる部分で誤解を招く描写は不徳
もちろんマンガのような創作物に正しい情報で人々を啓蒙する法的義務はない。男女の体格差については多くの作品で無視されているし、空気のない宇宙空間で爆発音はしないが、映画などでは効果音がついていることが多い。しかし、作中人物の法律の説明などが誤っていると雑誌連載時に批判を受けたマンガが、単行本で訂正や脚注を入れるときもある*2。グルメ漫画では単行本に収録が見送られたこともある*3。フィクションだと分かりづらく、生活や健康に関わる部分で誤解を招く描写は、不徳だと考えられている。
3. 作品批評が誤解を抑制する
無理な減量で不健康になる女性が社会問題になっている*4ので、問題のマンガは注意が必要な題材を扱っている。マンガ自体は少食を美化するものではないが、減量による性的魅力の減退を過小評価している面はある。撤回や訂正をすべきであろうか。
摂食障害への誤解を生むと多数から非難されて注目されたマンガだ。批判とあわせて読めば、痩せたら乳房も縮むことが理解できる。SNSで公開されている作品であり、批判を優越した発信力があるわけではなく、世間に誤解を広めているとは言い難い。批判によってその有害さは抑制されている。「私のマンガの世界では、餓死する女も乳房は縮まない。」と宣言してくれたらさらに良かったとは思うが、撤回をする社会的意義は乏しい。
作品批評が許されない世界であれば事前検閲で弾かないと有害さが抑制できないが、批判の自由があるので事前検閲が不要になっている事例。ネット界隈には創作物への非難を嫌がる人々が散見されるのだが、創作と批評は相互補完的な面もある。妥当ではない非難もよくあるが*5、ぼちぼち受忍していこう。
*1ある摂食障害を描いているように見えるマンガの絵が非難されている理由 - Togetter
*2財産分与に関して遺留分を忘れた『有閑倶楽部』の作中の弁護士の説明を念頭においたが、『女騎士、経理になる。』でも何かあった。
*3『美味しんぼ』2000年10月2日に『ビッグコミックスピリッツ』に掲載された第469話「はじめての卵」の回。
*4若い女性の「やせ」や無理なダイエットが引き起こす栄養問題 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
*5映画『すずめの戸締まり』スピンオフ絵本の走っている制服の少女のプリーツスカートの描写が非難されていたが、実際に走っている写真で絵本の表現が正確であることが確認された。女子生徒の制服のプリーツスカートの上部は縫い付けてあって開かないようになっていることが通例だが、これを忘れて描かれた絵が非難されることも、これを考慮して描かれた絵が非難されることもある。
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