2019年11月7日木曜日

献血の広告におけるジェンダー表現規制は、献血の提供者と受益者の健康に貢献するのか?

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しないよ。

献血の広告に今風のマンガの絵(つまり、萌え絵)を使うことに関して、シェイクスピア(もしくはその関連)を研究している文学者の北村紗衣氏が、「私の一家は輸血による肝炎感染被害を受けました。私は献血の広告に高い倫理性を求めたい」と主張しだし、「輸血による肝炎感染被害と宇崎ちゃんを使った広告には何の関連性もない」「実際は「高い倫理」(=個人的好み)」と弁護士勢から批判されている。

根拠と主張の乖離(Non sequitur)と呼ばれる誤謬推理を、語義曖昧論法(Equivocation)と言う詭弁で隠そうとしている。矢部善朗弁護士が指摘している通り、ジェンダー表現に関する倫理が広告に欠如していることで、肝炎感染被害が生じたわけでは無い*1。ジェンダー表現に関する倫理と、安全性の確保のための倫理は別の問題で、ひとつの「倫理」と言う単語で二つを指すことで分かりづらくしているが、主張の根拠足りえない。なお、2012年8月からC型に加え、B型肝炎の抗体検査も行われるようになった。

献血は提供者に健康に悪い影響が及ぶことを頼むものなんだから、頼むほうはできるだけ提供者が自分でしっかり考えて、可能であれば献血の意義とかを理解して提供できるような広告が望ましい」とも主張しているのだが、献血前に問診表が配られるし、献血後に血液検査の結果が届く。実際問題、そんなに考え抜かなくても献血に行って大丈夫であろう。

なお、萌え絵である事自体がジェンダー規範に反するのかはよく分からない*2。ジェンダー・ステレオタイプに沿っていたり、過剰に性的だと認められるのであれば、避けた方が望ましいと言うのはあるが、話題になっている絵に関してどちらかにどういう理屈で抵触するか明確に説明している論者はいない*3。女性をポスターに使うこと自体がダメと言うようなところまで厳しいのであれば話は別になろうが、萌え絵批判者でそこまで主張している人々はいないようだ*4。太田啓子弁護士に至っては、過去に自分がポスターのモデルになっていたし。

*1肝炎ウイルスの保有者が特定の絵柄のポスターに特別引き寄せられていたと言うような話はない。

*2関連記事:「宇崎ちゃんは遊びたい」×献血コラボキャンペーンの絵は過度に性的なのか?

*3ジェンダー社会学者の牟田和恵氏は「あの絵を「エロい」と思うほうがおかしい、たかが絵にすぎない、といった「反論」もあったのだが、さすがにそれは無理筋なのでここで触れる必要はないだろう」とまったく行わずに話を展開している。詭弁である。

*4興味深いことに、女性アイドルを使ったポスターには非難が向けられていない。

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