2018年12月10日月曜日

外国人技能実習生の労災が多いのは、受け入れ企業の業種と規模が主因

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朝日新聞が外国人技能実習生の労災死の比率と、日本の雇用者全体の労災死の比率を比較して、前者が多いと言う記事を書いている*1のだが、比較対象がちょっと雑なので指摘したい。

厚生労働省「技能実習制度の現状」を見ると、製造業、建設業、農業の中小零細企業での受け入れが多い事が分かるのだが、「労働災害動向調査」をみると製造業、建設業の中小零細企業の労災発生率が高いことが示唆される。業種と企業規模を制御すれば、日本の他の雇用者と比較して多いとは言えなくなるであろう*2

なお、「50歳から60歳の間では,就業者あたりの災害件数は他の年齢よりも比較的多い」ことは分かっているので、20代の多い外国人技能実習生は50歳未満の日本人に限るほうが望ましいが、こちらのバイアスは全年齢にならしてしまうと大きいものではなく何倍もの差異にはならない。

現状の外国人技能実習制度が無問題と言うわけではない。日本人が寄り付かない危ない職場に外国人技能実習生が入ることで、市場から淘汰されるはずだった危ない職場が保存された可能性もあるし、統計差の主因でなくても統計的に有意に日本語による意思疎通能力の問題で事故が発生しやすいことなどもありえる。SNSで安全意識の低い経営者への愚痴を見かけなくもないし、少なくとも外国人技能実習生を受け入れたところへの監督強化を強化したほうがよいかも知れない。安全管理以外の問題がほいほい出てくるかもだし。

*1外国人実習生、労災死4年で30人 雇用者平均超す比率:朝日新聞デジタル

*2業態×規模別の労災発生率(度数率)と労働損失日数(強度率)が出ているが、死亡率は分からないので比較はできず、類推である。また、100人未満の企業の統計が無いので、100人未満の職場に勤める人が9割超の外国人技能実習生の職場の予測値の計算は直接できず、100~299人の欄を仮に使うか、回帰分析などを使い外挿する必要がある。

*350歳から60歳の間では,就業者あたりの災害件数は他の年齢よりも比較的多い」ことは分かっている。

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