2018年12月19日水曜日

ジェンダー社会学者が隠す恋愛観、結婚観

このエントリーをはてなブックマークに追加
Pocket

誰しも誰かに恋心を抱くもので、多くの人は私と違って何らかの恋愛経験を持つものだからか、恋バナは個人の主観が雑に入ったものになりがちだ。一週間前も、ジェンダー社会学者の澁谷知美氏が乱暴な言い回しで持論を主張し、炎上気味に非難されていた*1。会話が捩れていて澁谷氏だけが悪いとも言えないし、御題に対する結論の是非は何とも言えないのだが、澁谷知美氏が自身の恋愛観、結婚観を隠しているように思えたので指摘しておきたい。

議論の流れは次のようなものである。どこかの男性の「誰かの唯一無二に選ばれたということが自信になるし、周囲からの信用にもつながるので、恋人が欲しい」と言う主張を、すずもと氏が「誰からも承認の得られない男性が必然的に至る主張」だと話を不用意に変形させ*2、澁谷知美氏が「誰からも承認されないのがそんなに苦しいんなら同じような男同士集まってバーベキューでもしたらいいのでは」「男の汚れ、男の中(うち)で (解決しろ)」と言い出し非難を浴びた*3

最初の御題が維持されていないのは澁谷氏の責任ではないが、すずもと氏の主張は実証的なものであって、澁谷知美氏の主張は規範的なものだから噛み合っていない。社会的に弱い男性同士が集まって遊ぶと言うのがちょっと無理な気がするし、そもそも承認欲求は社会的に強い人から、もしくは社会的に立場が強いと認められたいと言う話なのでは無いかと思わなくも無い。これらも問題ではあるが、澁谷氏の議論にはもっと根本的に説明不足なところがある。なぜ、承認欲求の充足のために、恋人をつくってはいけないのであろうか?*4

恋愛観、結婚観に依存していると思うのだが、承認欲求の充足のために、恋人をつくってはいけない理由はまったく述べられていない。どういう根拠が考えられるかの想像はしてみた。しかし、決め手になるようなものは思いつかないので、自明では無いと思う。恋人を作っても承認欲求の充足などにはならないのかと思ったが、古い会社などで妻帯してこそ一人前と言うところもあるので、一般にないとも言いがたい。女性側が男性のそのような欲求を事前に予測できないので安定的な関係にならないのかとも思ったが、男性の主張に女性が同意して関係を構築した場合にまで問題とは言えないであろう。

今回の炎上のコメントで特に指摘されているわけではないが、澁谷知美氏が自身の恋愛観、結婚観を隠したまま是非を断定している部分が、少なからずネット界隈の住民の困惑を生んでいるように思える。逆に、澁谷氏の恋愛観、結婚観が調査研究に基づく深みのあるものであれば、澁谷氏の主張を支持できるかも知れないので、そこを明らかにして欲しい。もっとも、社会学には物事の良し悪しを論じるための道具である規範的基礎がないせいか、社会学者は自身の直観的な判断を無説明に当然として話を進める誘導尋問と言う詭弁を弄しがちだ。無根拠な思いつきでしたと言われても、そんなに驚くことはない。

*1社会学者澁谷知美さん、「誰からも承認されないのがそんなに苦しいんなら同じような男同士集まってバーベキューでもしたらいいのでは」「男の汚れ、男の中(うち)で (解決しろ)」 - Togetter

*2そこそこ仕事などに慣れてきた若い男性社員が言いそうな感じである。

*3不幸な男性を「承認」しない女が悪いと言う主張に取り違えたのかも知れない。「淋しい男スパイラル」と題して、妙なフローを図示していた。

*4ディスカッションでは男性が恋人を求める状況が想定されていたが、スペック自慢をする女性は周囲からの羨望を求めているとも言え、承認欲求のために恋人をつくっている面が少なからずあるように思える。

0 コメント:

コメントを投稿