2017年11月2日木曜日

利用言語を意識すれば、時間感覚が変わる

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言語が思考に強く影響し、現実世界の認識を左右すると言うサピア=ウォーフ仮説が否定されてから久しいが、利用言語が知覚に影響する事もある。Journal of Experimental Psychology: General誌に掲載された研究で、スウェーデン語話者とスペイン語話者で、時間感覚に違いが出る状況が確認されたことが、POPSCIで紹介されていた。ただし、説明されるときに使われる言語によって体感時間の精度が変わると言う、ちょっと解釈が難しい実験結果であった。

40人のスウェーデン語話者と40人のスペイン語話者の2グループに、コンピューター・グラフィックスによる線が伸びていくアニメーションを見せつつ、「この線は3秒で4インチ、もう一つの線は3秒で6インチで伸びていきます」と言うような説明を研究者が口頭で被験者の母語で加えた後に、別の異なる長さまで線が伸びていくアニメーションを二つ見せて、アニメーションが完了するまでの経過時間を答えてもらった。スウェーデン語話者は、線が長く伸びる方が経過時間が長いと思うバイアスが観測された一方で、スペイン語話者はそうではなかった。また、この2グループに、線ではなく、異なるサイズまで体積が増えていく二つのアニメーションで、研究者に同様の説明を加えた後に実験を行なったところ、スペイン語話者は体積が大きくなる方が経過時間が長いと思うバイアスが観測された一方で、スウェーデン語話者はそうではなかった。

このバイアスは、文化ではなく言語によるものと考えられる。スウェーデン語とスペイン語のバイリンガル74人に実験したところ、研究者が説明に使う言語によって観測されるバイアスが変化した。つまり、スウェーデン語で説明したら、線が長く伸びる方が経過時間が長いと思うバイアスが観測され、スペイン語で説明したら、体積が大きくなる方が経過時間が長いと思うバイアスが観測された。つまり、利用言語を意識させることで、時間感覚が変わると言う話のようだ。

矛盾するようだが、人間の本来の感覚は母語に関わらず備わっていることも確認されている。研究者の説明を与えずアニメーションを見せて経過時間を聞いた場合は、スウェーデン語話者とスペイン語話者にバイアスの違いは観測されなかった。ただし、スウェーデン語話者とスペイン語話者も体積のアニメーションではバイアスが観測され無かった一方で、スウェーデン語話者とスペイン語話者も線が延びるアニメーションではバイアスが観測された。長さと時間を結びつける思考は、生まれ持った性質のようだ。

サピア=ウォーフ仮説は全く支持されていないのだが、言語が特定状況下である種の錯覚をもたらすとは言えるようだ。事前に何か説明した後に、それによってバイアスが入りそうなことをしてもらう状況が想像つかないので、何かの教訓にはなりそうにないが、サピア=ウォーフ仮説について語りたい人には役立つ知識になるかも知れない。なお、言語の組み合わせがスウェーデン語とスペイン語で一通りであるし、被験者数も少ないので信じ込むのはやめた方が良い。

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