2013年6月20日木曜日

経済評論家が独自展開する非対称性論について

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経済評論家の池田信夫氏が「麻生財務相の公言するテールリスク」で、色々な非対称性をリストしているのだが、問題が少なからずある。情報の非対称性が現実の問題を矮小化したものだと主張しているが、議論している内容は情報の非対称性の文脈で出てくる事象しかない。

池田信夫氏はリスクを負わないのに利益を得る集団がいることを「ペイオフの非対称性」「負担の非対称性」と表現するが、これはエージェントとクライアントでリスクや利得が異なるエージェンシー問題の一般的な設定に過ぎない。また、池田信夫氏は事後的に破綻した巨大銀行を救済をしてしまうことを「時間の非対称性」と言うが、これはソフトな予算制約と言い、やはりエージェンシー問題の良くある設定*1だ。

良くあるエージェンシー問題を忘れている部分もある。池田信夫氏は「ユニクロやソフトバンクのように、決断した経営者が責任もすべて負うなら、リスクテイクは望ましい」と主張しているが、一般のエージェンシー理論では株主や債権者がリスクを負って、経営者は有限責任しかないため、それこそモラルハザードが起きやすい。それを防止するために、銀行が監査したり、上場規制があったりするわけだ。

藁人形論法にもなっている。池田氏が批判する麻生財務相の「日本は自国通貨で国債を発行している。(お札=日銀券を)刷って返せばいい。」はデフォルト・リスクが無い事を指摘したものであって、別に財政ファイナンスを推奨したものではない。「お金を出し過ぎて信用がなくなったら金利は上がる」とも言っているからだ(時事ドットコム)。消費税率引き上げにも前向きだ(REUTERS)。

エージェンシー理論の文脈に従い、政治家がエージェントで、国民がクライアントだから、財政ファイナンスと言うモラルハザードを実行しかねないと批判すれば、明快な議論になったのだが。国民が財政ファイナンスの危険性を理解できずに選挙と言うモニタリング・システムが機能しないといえば、それこそ情報の非対称性の問題でうまくまとまる。

*1例えばDewatripont and Maskin(1995)を参照。

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