2013年2月10日日曜日

日銀理論、つまりインフレの弊害を知っておく

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リフレーション政策の信奉者で“日銀理論”、つまりインフレ抑制を重視する論調を無闇に批判する傾向が強い人を良く見かける。

意外に“日銀理論”はシンプルな理論的な根拠があるのだが、それを調べてから批判していないようだ。批判者には大学教員も少なくないのだが、経済学が専門外で論敵の主張だと思うと、その背景まで頭が回らないようだ。

“日銀理論”の是非はともかくとして、宗教がかった批判をしていても始まらないので、その理屈を確認してみたい。

1. インフレ課税と異時点間の消費配分

単純なモデルを考えよう*1。1期に生産物Yを生産し、1期にC1、2期にC2の消費を行う人々がいる。貯蓄は通貨でのみ行え、2期に1期の残りの生産物と通貨を交換する*2。C1とC2の配分バランスが良いほうが効用水準が高いとする。

ここで税金tを取るか、同等のインフレ課税を取るかを考えよう。税金tは生産物Yから直接徴収するとする。インフレ課税は政府が通貨を刷って使う事で、通貨価値(=残りの生産物/通貨量)を引き下げる効果がある。両方のケースの予算制約線と無差別曲線を描くと以下のようになる。

所得Yに直接課税、もしくは消費税で取る税金tは、効用水準は減るものの、配分バランスには影響を与えない(点A)。一方で、インフレ率zのインフレ課税があると、C2だけに“課税”される事になるので、配分バランスが歪む(点B)。効用水準UAとUBを比較すれば、点Bが非効率な事が分かる。なお、点Bが税金時の予算制約線(Y-t─Y-t)の上にあるのは、インフレ課税が税金tと等しくなるためで、偶然ではない。

2. 緩やかなインフレも資源配分を歪める

シニョリッジ獲得で財政再建と言う議論はあるし、増税の政治的な困難さや徴税コストを考えれば一つの方法ではあるのだが、こういう単純な定式化をすると非効率な事も出てくる。これは人々が将来を完全予見している事からも、意外に手堅い議論ではある。インフレも、そしてデフレも、資源配分を歪めるので問題だ。

ゼロ金利制約で均衡実質金利がマイナスになっている場合や、価格の下方硬直性などがある場合は、上述の議論と異なりインフレの方が望ましいと言える可能性も少なく無い。しかし“日銀理論”にも一理あるわけで、インフレーションを警戒する必要性については知っておく必要があるであろう。インフレーションが問題になるのは、ハイパーインフレーションで通貨が消滅する時だけでは無い。

*1詳しくは"Modeling Monetary Economies"のInflationの章を参照。

*2Modeling Monetary Economiesでは、OLGモデルでt世代はt-1世代に財を売却して通貨を得て、t+1世代から通貨を渡して財を購入する定式化になっている。

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