2013年2月7日木曜日

2012年初頭から期待インフレ率が上昇し始めた理由

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為替レートの変動が大きい一方で国債金利が安定していることから、外国人と日本人でアベノミクスの効果が異なると言うJ.P.モルガンの菅野雅明氏の見解に対して、ノーベル賞経済学者のクルッグマンがブレーク・イーブン・インフレ率の変化を示しつつ、期待インフレ率が上昇していると反論している(NYTimes)。しかし、さすがにアベノミクスが2012年初頭から予測されていたと言うのは、無理がある。

ブレーク・イーブン・インフレ率が、期待インフレ率を示す最も手軽で確実な指標なのは間違いない。これは名目利回りの通常の国債と、実質利回りの物価連動債の利率の差をとったもので、日本では2004年から2008年まで発行されていた。以下が10年物国債によるブレーク・イーブン・インフレ率だ(JAPAN BOND TRADING Co., Ltd.)。

確かにクルッグマンの言う通り、ブレーク・イーブン・インフレ率、つまり期待インフレ率は急上昇している。2012年初頭から。自民党が選挙で大勝した2012年12月でも、安倍総裁が誕生した2012年9月でもなく、民主党の野田総理が消費増税関連法案を閣議決定して国会に提出した2012年3月30日の前後からだ。

消費税率が上がれば、消費者物価指数(CPI)が上がる。CPIが上がれば、物価連動国債の償還価格が上昇する。消費税率の引き上げが決定されれば、期待インフレ率が上がってブレーク・イーブン・インフレ率が変化するのは当然と言う事になる*1

米国で日本の税制改革の細かい経緯が報道されているとも思わないので、クルッグマンが政策変更を予想したと解釈したのはやむを得ないところもあるが、消費税関連の動きだと見たほうが適切であろう。菅野氏の反論が期待される。

*1ただしニッセイ基礎研究所の「年金ストラテジー (Vol.191) May 2012」の図表2を見ると、当時は3年以内の増税は予想されていなかったように思える。

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