2012年2月16日木曜日

一般意志2.0は世論調査にも劣る

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東浩紀氏の提唱している『一般意志2.0』は、ルソーの一般意思とは異なり意思決定メカニズムでは無く、「情報技術によってサポートされた、世論調査を遥かに超えた、細かい精度をもった民意の可視化システム」だそうだ(BLOGOS)。定義不可能な“民意”は論理的に可視化できない(もしくは“民意”から“正解”は導き出せない)わけだが、それを置いたとしても、世論調査をSNSデータのテキスト・マイニングが超える事は無い。

1. サンプリング・バイアスの問題

分布の状態を調べる上でランダムサンプリングであることほど重要なことはねぇんだよ」と端的に指摘している人もいる(唐突に分布の話をしているように思えるが、東氏が『「一般意志2.0」のシステムで出てくるのは、どちらかというと、様々な意見がどのように分布しているかという一つの地図』と説明している)のだが、もう少し平易に補足してみよう。Twitterや2chやニコニコ動画のSNSデータに何故バイアス(偏り)が入るのか、何故バイアスを除去でき無いのかだ。

1. SNSのデータにバイアスが入る理由
そのSNSに参加している人々がそもそも特定層であるし、参加していてもSNSで発言を行うとは限らない。また、発言を行ったとしてもSNSで政治問題での本音を語るとは限らない。
2. SNSのデータのバイアスが除去できない理由
SNSのデータは、ランダム・サンプリングで特定層に偏らない人々に対して、整理整頓された質問を行ったものではないからだ。少なくとも発言がゼロの人の意見を吸い上げることはできない。

SNS参加者は既に数千万はいるので特定層とも限らないと思うかも知れないが、積極的に利用している人は、やはり特定層になる。Facebookで外食日記をつけている層が、日本全体を代表していると思えないし、彼らが政治問題を語るわけでもない。国会でニコニコ動画のコメントを流すとしたら、リアルタイムに昼間の国家を見る事のできる老人や失業者の声しか反映されない。また構造的に、将来、このバイアスが排除される事も無い。

もちろんSNSに登録されている個人情報を元に層化無作為抽出法を行い、SNSのアプリケーション作成機能を通じてパネル調査などを行う事は有効な世論調査の方法になる可能性はある。ただし、この場合も『SNSに登録されている個人情報』の信憑性が、調査結果に大きく影響する事になる。

2. 現実への適用を示唆している以上、他分野からの批判は当然

さて東浩紀氏の『一般意志2.0』だが、政治学から見るとルソーと全く異なる主張をし、経済学から見るとアローの不可能性定理を看過しているだけでは無く、統計学から見てフィッシャーの手法を無視している事が明らかになった。専門用語を並べる事で東浩紀氏の専門とする人文評論は許されるのかも知れないが、もっと中身が無いと意味のあるコンセプトにはならない。

東浩紀氏は、『一般意志2.0』は思想だから現実的な意味は関係ないと言うものの、現実の問題をそれで議論しようとしている。人文評論の殻にこもっているならともかく、実際に意思決定メカニズムや社会調査の問題を議論しているわけで、それらの方面からの批判を避けるべきではない。もちろん『一般意志2.0』に意味があるのであればの話で、無意味なコンセプトだから放置してくれと言う事であれば、批判には値しないのであろうが。

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