2012年2月6日月曜日

緩やかなインフレは財政負担?

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学術的に確固たる証拠は無いが、傾向として確認できる現象として、緩やかなインフレ率と財政負担の関係がある。ドーマー条件から、経済成長率>金利であれば財政赤字は縮小、経済成長率<金利であれば財政赤字が拡大する事は広く知られている。この「名目経済成長率-名目金利」と言う財政負担の指標は、どうもインフレ率と相関を持っているようだ。

OECD Statisticsから1994年~2010年のG7のデータをダウンロードしてきて、「名目GDP成長率-長期金利(Long-term interest rates)」と「CPI上昇率」の関係を見てみよう。CPI上昇率が高いインフレ傾向にあると、「名目GDP成長率-長期金利」がプラスになって行く事が分かるはずだ。このスプレッドがプラスの方向に拡大すると、財政負担の軽減につながる。

決定係数は0.169だが、切片項もCPIの係数(0.882)も1%有意性を持つため、統計的に正の相関がある事は言える。サンプル数は117だ。国別ダミーを入れても、CPIの係数が0.807になるが、推定結果に大きな変化は無い。F検定で有意な差が無い事を確認した。

もちろん因果関係は逆かも知れないし、見かけ上の相関かも知れない。マクロ経済学のモデルで説明しないと因果関係に触れる解釈はできない。しかし、緩やかなインフレでも長期金利が上昇して財政が破綻するとは、簡単には言い切れない事は分かる。

さて慶応大学の小幡績氏が、「重要なのは、名目金利とインフレ率」と言及したあとに、次のように述べている(BLOGOS)。

実は、リフレの最大の誤りは、リフレで政府の借金を実質減らせ、というが、1%から3%に名目金利が上昇すると、実質の借金額が減る前に、借り換えニーズ、利払いニーズによる借金の増加がきつくなってくるのだ。

インフレ率の上昇が名目金利を高めるとしても、「名目GDP成長率-長期金利」がプラスになるのであれば、むしろ財政負担は減る事になる。どのような経済モデルを背景にした主張か分からないので、小幡氏が間違いか否かは分からないが、少なくとも説明が不足しているように感じざるをえない。

期待インフレ率の上昇が名目金利を引き上げるフィッシャー効果は否定できないが、それでも名目GDPがどう動くかには自由がある。緩やかなインフレがどういう効果を持つのかは議論が別れるところではあるが、何も悪い話だけでは無いのかも知れない。

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