2011年12月30日金曜日

高橋洋一のインタゲはちょっと違う?

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元財務官僚の高橋洋一嘉悦大学教授がインタゲを強調せずにリフレ政策でインフレ率や為替レートを操作できると主張するのはおかしいと呟いていたところ、御本人から「バカか。インタゲなんか10年以上前から言っている。よく読んでからかけ」とコメントを頂いた。そのやり取りを見ていた人から、「「インフレ目標」言ってますよ。」と言う指摘も受けたので、紹介された動画を見てみた。しかし、何かがおかしい事になっている。

1. インタゲは日銀のガバナンスの為にある?

動画は2010年8月7日に放送された「未来ビジョン『埋蔵金の高橋洋一、デフレ克服策!』」と言う番組のようだ。

正直言って、おかしい。高橋氏は「日本銀行に何をやらせるか、もしくはうまくできなかったときには日本銀行に責任を取らせる仕組みがインフレターゲティング」と説明しているが、一般的な文脈とは大きく異なる。

2. インタゲは市場の期待インフレ率を操作する

教科書的には、インフレターゲティングのターゲットレートは市場に対するメッセージで、期待インフレ率を操作するために宣言される。著名なマクロ経済学者の伊藤隆敏氏の言葉を借りれば「市場にきちっとした物価目標を提示することで、インフレ期待の安定と、金融市場の安定性を確保する」のがインタゲだ。

「期待インフレ率」は市場の将来予測インフレ率だ。「どうせインフレになったら日銀は引き締めをする」と思われていると、日銀が必死にマネタリー・ベースを拡張しても、市場は貨幣価値に影響は無いと考えて、金利もインフレ率も為替レートも変化しない。流動性の罠と言われる状態だ。日本はバブル崩壊後、流動性の罠に陥っていると考えられており、ノーベル賞経済学者のクルッグマンはインタゲを宣言した上で、リフレ政策を行い、期待インフレ率を操作することを主張している。

ターゲット・レートが設定されていると、市場は日銀が何をしてでもインフレ率を調整してくるので、市場は覚悟を決めて期待インフレ率が動く事になる。そうなると、日銀がマネタリー・ベースを大きく調整しなくても、実際のインフレ率を望む範囲内に置く事ができる。

3. 高橋氏は期待インフレ率操作は不要だと考えている?

高橋氏のインタゲは日銀のガバナンスを目標にしており、期待インフレ率の操作を目指したインタゲとは異なる。日銀がインフレ目標を背負えば、市場の期待インフレ率も変わるであろうから、両者は同じに思えるかも知れない。しかし高橋氏の論理では、量的緩和を続ければ市場にインフレ率を宣言する必要が無いと言う意味で、一般的な文脈で言われるインタゲとは異なる。

RIETI ポリシーディスカッション 第7回:インフレ目標政策への批判に答える」を参照しても、「インフレ目標政策は、インフレを押さえるばかりか、デフレを克服しデフレに陥らせない効果もあり、デフレ対策として望ましい」とあるが、理論的な背景は明確にされていない。

4. インタゲによる流動性の罠からの脱出

一般のケインジアン的な文脈では、デフレが10年以上続いているのは期待インフレ率がマイナスで、貨幣需要が無限大である為だと言う事になる。みんなが将来もデフレだと予想しているので、投資をするより貨幣を持ち続ける方が得なわけだ。そして過少投資状態が不況を生み出している。

確かに過去10年以上の日本で、金融政策の効果が無いのは自明なように思える。日銀はゼロ金利を維持しており、決して金融引締めをしているわけではない。また量的緩和として、日銀は2001年から2005年末までマネタリーベースを大幅に増やしたが、その間は輸入物価を除けばずっとデフレ気味だ。物価連動国債と利付国債の差であるブレーク・イーブン・インフレ率は期待インフレ率だと解釈でき、それはリーマン・ショック前までは1%未満だがプラスだが、僅かな値でしかない(財務省)。また、マネタリーベースと期待インフレに強い相関は無い。

金融政策が無効化している理由は、流動性の罠にあるからだ。金融政策でデフレ経済からの脱却を図るには、期待インフレ率をどうにかしないといけない。ゆえに市場にメッセージを送ると言う意味で、インフレ・ターゲティングは重要な要素だと考えられている。量的緩和と同じかそれ以上に、インタゲ宣言は重要だ。

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