2011年9月7日水曜日

普天間基地代替施設移設にある意外な障害

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鳩山元首相がひっくり返した普天間基地代替施設移設問題だが、野田内閣は米側にせかされて辺野古移設を推進するようだ。しかし、意外な障害が移設を困難にしてしまうかも知れない。普天間飛行場の騒音問題の改善だ。

普天間基地の騒音問題は、一目で存在を理解できるのでメディアでも大きく取り上げられる。騒音被害も2010年7月の福岡高裁で認定されている。しかし、程度や原因の理解は簡単ではない部分がある。

1. 普天間は伊丹ほど騒音計測値は大きくない

大阪国際空港(伊丹空港)と普天間飛行場を比較してみよう。どちらも住宅密集地に存在する空港で、離着陸回数も伊丹空港が年間10万回、普天間飛行場が年間7万回と利用率も近いからだ。伊丹空港も過去に騒音問題を抱えていたが、騒音レベルが低下した現在は沈静化している。DC-8が117EPNdBでB777が94EPNdBとされ、30年間で50%以上、航空機エンジンの改良で騒音が削減された(関西3空港時代の大阪国際空港の活かし方)。

日本で航空機の騒音規準としてはWECPNLが使われているが、伊丹空港周辺(利倉センター、2001年)で84.9、普天間周辺(上大謝名、2005年)で80.9と伊丹空港の方が高い騒音レベルである事になる(航空機騒音測定結果の概要(普天間)大阪国際空港の在り方について)。利倉センターと上大謝名はどちらも滑走路先の最近騒音計測点だ。

2. 数値に現われない普天間の騒音

日本一の騒音空港が伊丹空港だとすると、普天間飛行場周辺の騒音問題が過剰反応されているように感じるかも知れない。そもそも普天間飛行場は周辺に住宅などがほとんど無い農地に建設されており、空港周辺に住民が集まってきたと言う歴史もある(左写真)。自発的に騒音源近くに居住したとすれば、騒音は問題でなかったはずだ。だが、普天間飛行場が伊丹空港よりも実際に「うるさい」可能性がある。

まず、WECPNLという騒音指標が普天間の騒音を過小評価している。WECPNLは少し古い騒音規準で、近年は国際的にはLdenという指標が使われるようになってきている。色々と違いがあるが、大きく特性が乖離するのは騒音の発生時間だ。WECPNLは騒音の発生時間等を一律だと仮定するが、Ldenは機種ごとに調整を行う。宮城県の資料では、実測データでWECPNLとLdenの相違を分析し、離着陸時間が短い機種はWECPNLが過剰評価、長い機種は過少評価する事を示唆している。普天間基地に配備されているのは海兵隊のヘリコプター部隊だ(普天間基地@米軍飛行場がある暮らし)。離着陸時間が長い事を考慮すると、やはり普天間飛行場の騒音の方が深刻と言う可能性も高い。

次に、毎日の離着陸数が一定しない軍事基地の特性がある。繁忙期がある空港の場合、繁忙期の騒音レベルが住民が体感する騒音レベルになる事が知られており、訓練や軍事作戦で不定期に活動が活発する普天間飛行場の騒音は、もっと高く評価すべきかも知れない。

3. V-22オスプレイが騒音レベルを下げる

ヘリコプターとWECPNLが数値に現われない普天間の騒音を作り出しているとすると、米軍の新型機V-22オスプレイが問題を解決できるかも知れない。

ティルトローター機のV-22オスプレイは低騒音な事が知られている上に、速度的に離着陸時間の短縮化が期待できる。旧型機のCH-46と比較すると騒音は1/6とも1/9言われる(SignOnSanDiego.comV-22の安全性実績と騒音数値データから普天間基地配備反対論を検証する)。またV-22が滑走路へ着陸はYoutTubeの動画で見る限りはスムーズだ。開発と初期生産段階での重大事故発生により安全性が不安視されているが、飛行10万時間当たりの損害額200万ドル超の事故数が1.28と、CH-46の1.37より安全とされている。2012年秋から、このV-22が普天間基地に配備される。

4. V-22オスプレイが辺野古への移設理由を一つ消す

騒音問題が全てでは無いが、普天間基地代替施設移設問題の大きな理由でもある。日本で最も大きな騒音問題があると認識されているからこそ公害問題として認識されているわけだが、V-22オスプレイの配備で前提が崩れる可能性がある。伊丹空港のように、新型機による騒音逓減が普天間基地の問題を大きく変えてしまうかも知れない。

普天間基地の存在が街の開発を妨げていると言う指摘もあるが、辺野古への基地移設は辺野古の自然を破壊することになる。辺野古の環境破壊によって普天間の公害問題を解決する二つの環境問題の二者択一の図式は消える可能性が高い。トレードオフの関係なので賛否はあるであろうが、近年の風潮からすると都市開発のための自然破壊は共感を呼ばない。

技術革新によって騒音公害が逓減されるのは望ましい事には違い無いのだが、辺野古移設案推進を図る野田内閣にはありがたくない事実になる可能性がある。V-22オスプレイの静粛性に地元住民が気付く前に、日米合意の履行を急ぐ必要があるであろう。

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