2011年1月24日月曜日

ワインぶどうにある遺伝的多様性不足

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ワイン用のぶどうは世界で広く栽培されており、品種も豊富にあるが、意外に遺伝的多様性が無いので感染症に弱い。6000年前のトルコのワイナリーの時代から、赤や白を問わずほとんどのワインがヨーロッパブドウ(Vitis vinifera vinifera)の亜種であり、遺伝的多様性が無いことが危惧されている(BBCPOPSCI)。

実際に19世紀に欧州全土のワイナリーがフィロキセラ病で全滅の危機に陥ったことがあるが、他にもうどん粉病やべと病が問題になることがある。オーストラリアでは、年間に単種の白かびによる病気だけに1億ドルを費やし、ワインヤードを殺菌しているため、費用的にも環境的にも負担が大きいそうだ。感染症が蔓延し、ワインの収穫が不可能になる事も考えられる。

そこで、コーネル大学とスタンフォード大学、米農務省(USDA)で、ワインの味に関連するぶどうの遺伝子を洗い出し、病気に強く味が良いワインを作る共同研究が始まっているそうだ。既に1,000を超えるサンプルの遺伝子マップが作られており、PNASの紀要で発表されている。

なお、POPSCIはワイン愛好家が古いワインが飲めなくなるかも知れないと示唆しているが、遺伝的多様性を考えると、新しいワインと古いワインの両方が栽培される方が望ましいだろう。ワインぶどうの木は一度植えられると、通常で30~80年、長いものは300年も収穫に使われるそうだ(ドイツワイン便り)。少なくとも現在の愛好家が死ぬまでは、今あるぶどうの木が、遺伝子組み換え作物に完全に取って替わられる心配はしなくて良い。

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