2026年9月28日月曜日

シニア教育学者の本田由紀氏への懲戒処分や団体からの批判を求める人々へ

シニア教育学者の本田由紀氏のTwitterへの発言と説明に対して、処分や学会などの組織からの批判を求める人々が多数いる。25日には関文科相が「過去の処分事例もしっかりと踏まえ、適切な対応に取り組んでほしい」と言及した。

しかし、本田氏のツイートや補足説明には批判すべき点はある*1のだが、組織的に責め立てる必要があるのか、戒告や減給などに値するのかは疑問だ。

本田氏の勤務校でSNSの発言で懲戒処分された例と言うと、2020年1月の特任准教授の事件が連想される。ある特任准教授が/Twitterで、東京大学に多数在籍している中国人を明確に蔑視する発言を繰り返し、また関連して東京大学及び教員・元教員への誹謗中傷を行ったとして、悪質な就業規則違反と見做されて懲戒解雇された。

本田氏の発言は文意が明確ではない一言であり、特任准教授の事例とは様相が大きく異なる。特定のエスニシティに言及したものでもなく、勤務校の学生や同僚への誹謗中傷も伴わない。皇族及び有力政治家を誹謗していると捉える事はできるであろうが、両者は公人であり、また報道されている政策に関する発言であるため、(過去の裁判例などに照らして)意見論評として許されるべきものである。

ある若手教育学者は問題としていたが、「遺伝的要因のおそろしさ」と言う表現自体を一律に非とするわけにもいかない。

  • スポーツなどで遺伝や血統を理由にする論評は多いし、おそろしさは肯定的にも否定的にも使われる言葉だ。学問でも、双子を使った研究で、現代社会では学力は努力より遺伝の寄与率が高いと言うような話が出てくる事もあり、平等主義者はこれを「遺伝的要因のおそろしさ」と言ってしまうかも知れない。
  • 優生思想的であるという主張もあるが、血統改良を主張していないので優生思想ではないし、そもそも優生思想自体が悪とも言い難い*2。ナチスの安楽死計画はもちろん、過去の断種法に人道的に大きな問題があったのは事実だが、婚姻相手を選ぶことでメンデル劣性の病因遺伝子の発現を防ぐ行為が人道的に問題があるとは言い難い。

要するに文脈を考える必要がある。

本田氏のツイートに関しては、有力政治家一族の振る舞いが遺伝によるものと言う主張と捉え、安易に遺伝を理由にするなと言う批判は可能だが、本田氏は批判を受けて、そのような意図ではなかったと説明している。仮に本田氏の説明が虚偽で批判が真実を言い当てているとしても、議論は既に修正されており、同様の主張を繰り返しているわけではない。

遺伝的に容姿が悪いと言う主張だと捉えている人々もいた(気がする)が、本田氏は容姿に言及していない。そう捉えるためには有力政治家と皇族の容姿が悪いと言う共通認識を批判者も持っている必要があるが、さすがに失礼なので、これを認めた上での議論はできない。

本田氏のツイートに、社会的、組織的に対応すべき問題があるとは言い難い。

本田由紀氏はオープンレター「女性差別的な文化を脱するために」*3の賛同者リストに載る一人であり、オープンレターと同様のキャンセルカルチャーに悩まされるのは因果応報という考えの人もいるようだが、本田氏に加えられる制裁は、他の人の同様のうっかり発言にも加えられるようになることに注意すべきだ。

ところで本田氏があのオープンレターへの支持を今からでも撤回すると言うのであれば、もちろん歓迎する。そもそも賛同した覚えが無い場合は、訂正を求める発言になるが、それでも歓迎。あの本人確認を行わなかった賛同者リストの信憑性は低い。

ただしキャンセルカルチャーに反対する立場であれば、適切ではない読解に基づく批判を行った者は、社会的な不利益を被るという警告は行うべきではない。人間、誤解を招くような発言をしてしまうのと同様に、党派性などから「曲解」してしまうこともある。それを強く戒めるのは、言論の自由を抑圧する。虚偽が入っていない場合は、社会的制裁を加えるべきではない。

*1架神恭介氏の「本田由紀氏の「解説」について」ぐらいの批判は加えておくべきだ。

架神氏が言及していない点について、ひとつ付け加えておきたい。本田氏は、宮家当主の女性皇族が男性皇族と同額の皇室費を貰えるようになったことを不当な利益誘導のように非難しているツイートを、その非難に対して批判することなく引用している。補足説明でも、血縁者への優遇を非難しているとあり、女性皇族への皇室費増額を優遇と捉えていると理解できる。しかし、女性皇族が男性皇族よりも少ない皇室費であるべきと言う自明な理由は無いはずだ。本田氏の議論には、この点についての考察がない。

*2関連記事: 『優生学と人間社会』を読んで左派のレッテル貼りを検証したら

*3関連記事: オープンレター「女性差別的な文化を脱するために」は、人格への中傷ではなく、主張への批判に対して、社会的制裁を加えろと呼びかけている

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