2012年9月5日水曜日

西成特区構想のシンポジウムの基調講演の提案は現在の住民には意味がない

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週刊ポストの『西成特区構想のシンポジウムで「意味ないやろ」とヤジ怒号飛ぶ』と言う記事に、労働政策学者の濱口桂一郎氏が学習院大学経済学部経済学科教授の鈴木亘氏を非現実的と批判している。

西成特区構想を考えるシンポジウムは、橋下氏ら大阪維新の会が固めている西成特区構想を、同地区の住民に説明した上で意見を聞くと言う会だ。

しかし、動画がアップロードされていたので視聴したのだが、本質的な問題はプランの現実性とは別にあるように思える。何が問題かと言うと、鈴木氏の提案が現在の西成住民の利益を考えたものでは無いと言うことだ。36分15秒以降が本題だと思うので見て欲しい。

叩き台で固まった方向性では無いと言う言い訳(10m38s~)があるが、次のような主張を行っている。

  1. 目先の問題だけではなく、20年後、30年後の将来設計が必要
  2. 西成地区は、人口動態予測で過疎化・高齢化が進む
  3. 日雇い労働の減少で、生活保護受給世帯が増えている
  4. 西成地区を振興する必要がある
  5. 大学誘致、外国語教育、留学生増加、中高一貫教育など文教政策を推進
  6. 観光促進*1
  7. 子育て世帯の誘致政策(学習塾バウチャー、保育施設の充実と改善、住宅補助)

西成が廃れた後に何をするかと言う議論で、実のところ日雇い労働者などの現在の住民には大きな意味が無い。彼らがいなくなった後の準備だからだ。この構想が行政にとって現実的だとしても*2、短期的な施策も打つと言及していても、傾聴していた住民には非現実的なものになる*3

政治的には西成区に関係の低い大阪市民にプレゼンテーションすべきだし、西成地区で構想を説明する場合はもっと具体的なアイディアが必要であろう。地権者ならともかく、大半の住民が蚊帳の外な事を認識していない。短期に実施可能な施策*4以外は、何を言っても非現実的に響くはずだ。

構想自体は非現実的だとは言い切れないと思うが、誰の利益を代弁した構想なのか認識が甘いように思える。なお、西成地区の住民の意見を吸い上げることが目的らしいので、同シンポジウム自体は大きな成果があったと思われる*5。未来を語ることが求められていない事を、認識したはずだ。

*1観光向きの地域に思えないが、「新世界・西成のグルメマップが人気…裏面は英語」など人気観光スポットと言う報道もある。

*2文教政策を推進している地区は全国に大量にあり、新規誘致する大学の競争力が往々にして高く無いことを考えると、安易なようには感じる。大規模な都市計画は、どのようなものでも非現実的に思える側面もあるであろうが。

*3フロアからは将来に向けたプランニングよりは、短期的に通学路の風紀秩序やゴミ処理などの問題を解決することを明言するように迫られており(Youtube)、長期的な都市計画への関心の低さが伺われる。

*4配布資料のスライド14~21では短期的な問題にも触れられている。ただし住民に利益を誘導するような内容は、教育バウチャーや特別清掃事業の拡大による雇用増ぐらいであろうか。

*5ただし全てのシンポジウムに共通した問題だが、参加している人々が特定層に偏向している可能性は常にある。

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