2022年7月3日日曜日

エロ可愛い格好をしている女の子は、頭が悪くなっている

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国外の女性表現の是非の議論では、男子にではなく女子の振る舞いへの影響が危惧されていて、ちょっと昔のアメリカ心理学会(APA)のセクシー化された女子に関するタスクフォースのレポート*1では、女子の学業への悪影響が挙げられている。

APAのレポートは多岐な議論が紹介されているのだが、女は容姿と愛嬌と理解して熱心に勉強しなくなると言う話の他、真似をしてエロ可愛い格好をするようになると勉強に集中できなくなる説が紹介されている。ネット界隈の議論では女性心理への悪影響を見落としがちだし、特に認識力への悪影響は無視されがちなので紹介しておきたい。

1. セクシー化を拒絶できない女子がいる

勉強に集中できなくなるのであれば、勉強するときはエロ可愛い格好をしないのではないかと思うわけだが、APAのレポートでは、

Keen observers of how social processes operate, girls anticipate that they will accrue social advantages, such as popularity, for buying into the sexualization of girls (i.e., themselves), and they fear social rejection for not doing so (Brown & Gilligan, 1992; Nichter, 2000;Tolman, 2002).(拙訳:どのように物事が進むのかについての注意深い観察者である少女たちは、少女のセクシー化を受け入れることで、人気のような社会的利益を獲得することを予期し、そうしないことで社会的に拒絶されることを恐れている(Brown & Gilligan, 1992; Nichter, 2000;Tolman, 2002))

と説明してあり、他にも理由は挙げられていたが、不本意ながら社会に拒絶されないために、短くしすぎたスカートがずり上がっていないか心配しながら中高に通っている女子が多々いることになっている。スカートの下にスパッツどころかジャージを履いた女子高生の存在はどうなのか気になるが、まぁ、感受性に差異があってセンシティブな女子もいると理解しよう。

2. セクシーな格好をする自己嫌悪に陥る

APAのレポートでは、セクシーな格好をする自己嫌悪に陥り、それが勉強への集中を阻害することを唱えた心理学実験を複数参照している。その中で、Fredrickson et al.(1998)*2が先駆的な研究になる。被験者に無作為に体型が明確に分かる格好(i.e. 水着)と体型が分かりづらい格好(i.e. セーター)を割り当てたところ、水着の被験者はその状況での自己の体型*3への評価(state self-objectification)が悪化し、透明になりたいとか、消え去りたいなど自己嫌悪(Body shame)に陥ることが判明した。Body shameの方は、日常的な自己の体型への評価(trait self-objectification)が低いほど、水着にさせられた影響が大きかった。

なお、水着は個別に大きな鏡のある部屋で着替えて、自分の体型をよく意識させる鬼実験になっている。オマエはその自分のたるんだ腹を直視しろ。現実から目を背けるな。水着もしくはセーターが身体に馴染んだ後に質問をするので、馴染むまでの15分間で教育相の調査に協力しましょうと被験者を騙しているところで、どうなんだ感があるのだが。

3. 体型への自己評価が低いと数学の試験のスコアが落ちる

自己の体型への評価(state self-objectification)が悪化すると、数学の試験のスコアが落ちる。Fredrickson et al.(1998)ではパス解析を行っていなかったので、同論文の大規模化した追試であるHebl, King and Lin (2004)*4を参照するが、セクシーな格好をする自己嫌悪に陥り、それが勉強への集中を阻害することが、簡素ではあるがパス解析で示されている。

なお、論文では示唆されておらず、統制変数として入っているはずの日常的な自己の体型への評価(trait self-objectification)の影響は明示されていなかったが、パス解析からするとセクシーな格好をしていなくても影響を受けてもおかしくない。しっかり検証されていないので、何も示されていないとも言えるが。

4. 政策的含意

エロ可愛い女性表現が世にあふれることで、女子が否応なくセクシーな格好をしだし、そうでなくてもメディアの女性と自分を比較することで自己嫌悪に陥ることで、学業に集中できない環境が生じる可能性はそこそこある*5。再現性もあるので、可能性を危惧するぐらいはおかしくない。ただし、エロ可愛い女性表現を規制すべきと言う結論に達するのは短絡的だ。

APAのレポートでも、女子はメディアの描く女性表現だけに影響されているわけではなく、保護者や教員などの大人や友人などの交友関係にも影響されていることが指摘されているが、教育で悪影響は相殺できるかも知れないし、自らセクシーな格好をすることによる悪影響が大きいわけだから、学業の場で女子にセクシーな格好をさせない施策で十分な蓋然性は高い。つまり、日本で一般的な中高の制服はメディアのセクシー化の女子の認知能力への悪影響を強く抑制している。

口やかましいオバサン連中の最近の女の子の格好がはしたない云々という小言は、Fredrickson et al.(1998)とHebl, King and Lin (2004)である程度は正当化できる。服装がエロティック過ぎると娘に説教したい親御さんは、参照するとよい。ただし、自分に自信がある女子はセクシーな格好をしても自己嫌悪に陥らないので悪影響なしとも言えるので、賢い娘に詳しく説明すると反論されて娘の成長を感じるかもだが。

*1Report of the APA Task Force on the Sexualization of Girls

*2Fredrickson, Roberts, Noll, Quinn and Twenge (1998) "That swimsuit becomes you: Sex differences in self-objectification, restrained eating, and math performance," Journal of Personality and Social Psychology, Vol.75(1), pp.269–284(のcorrection

計量部分の分析の方針が実験1と実験2でよれていて、実験1の結果をプレゼンしたら、あれこれ批判を受けてフォローアップの実験2を実施したが、実験2の水着の話の受けが良かったので、実験2をアピールする論文を書いたと邪推してしまう。また、水着を着せた悪影響は男性には無いこと、間食が抑制されることが追試では確認されていない。

*3人格ではなく体型で評価するようになると言う意味で、自己モノ化と表現されている。

*4Hebl, King and Lin (2004) "The Swimsuit Becomes Us All: Ethnicity, Gender, and Vulnerability to Self–Objectification," Personality and Social Psychology Bulletin, Vol.30(10), pp.1322–1331

*5男子は女子ほど影響されない。紹介した2本の論文でも性差は確認されるし、そもそも女子ほど性的に表現されないこともあり、他の研究でも男性の性的自己モノ化の程度は低いとされている。

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