2020年7月15日水曜日

ネット論客の十八番とされる #シーライオニング とどう付き合うべきか?

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ある表現の自由戦士のネット論客の駆使する論法がシーライオニングではないかと言う指摘があって、質問をしないで黙って主張を受け入れろという意味かと批判されている。シーライオニングは論点から遠い初歩的な質問を繰り返すことで議論を脱線させたり、相手を疲弊させることで議論を中断に追い込む詭弁*1で、ネット界隈では外形的にそうなってしまっているものがよく見られる。

実際にシーライオニングになっているかはよく分からない*2。初歩的とされる質問や頻出の質問を続けることが詭弁であるのか、真摯な態度なのかは紙一重だ。初歩的な質問の多くは議論の前提部分に関わってくるので疎かにはできないし、何かの主張をする人は拠って立つ根拠や使っている用語について説明できることになっている。性的モノ化やポルノ化と言った概念を持ち出した表現規制の議論であれば、これらの単語の意味を説明した上で、用いる倫理とつき合わせて是非を議論しないといけない。しかし、ある種の表現を非難する人々(以下、表現規制派)の議論は、大学教員のものを含めてぼんやりとしており、自分が用いている単語の意味をよく把握していないものが少なく無い*3。説明が必要な事を、自明としてしまっている事も多い。

一方、話題の表現の自由戦士のネット論客がシーライオニングでは無いとしても、シーライオニング的な一面があるのは否定できない。表現の自由戦士は2013年の人工知能学会の学会誌の表紙のイラストぐらいから表現規制の話で言い争っているわけだが*4、そこから最近まで性的モノ化やフェミニズムについてのインプットがほとんどされていなかった。先生に難癖をつける生徒だが、自分で調べることはしない。古典的リベラリズムとソーシャル・リベラリズム、リベラル・フェミニズムとラディカル・フェミニズムの見分けをつけずに、早まった一般化(Hasty generalization)、発生論の誤謬(Genetic fallacy)になっていた主張もある。批判が前提とする初歩的な誤りの訂正からはじめないといけない。表現規制派からみて、繰り返し同じことを説明させられている感覚になるはずだ。

シーライオニングが用いられていると言うよりは、表現規制派と表現の自由戦士の多くが、用語や前提を整理する習慣が無いために生じた混乱と言える。ネット界隈の言い争いらしい状態ではあるが、改善策を考えよう。

  • 一義的には主張者の方に説明責任がある。まず、表現規制派の人々に、いつでもコピペできるように、用語や頻出の質問への130文字以内の回答を用意しておくことを勧めたい。なお、教科書的な話を短く要約しようとして分かることもあって、理解が深まる効能もある。
  • 表現の自由戦士の中でも弁護士勢はかなり文献を読みこんでいるが、批判者も何でも教えてもらおうという姿勢をとるのではなく、自ら議論の背景を調べていこう。表現規制派はどうも手堅い議論を展開する訓練を受けて来てない人々が多いので、「思いやりの原理」を働かせて論点を整理しようにも、彼らが並べる言葉だけで何かを理解するのは困難だ。

もちろん考え方にもよる。ネット界隈での議論に意義を見出せない場合は、質問に答える必要はない。また、程度問題もある。延々と質問してくる人に延々と回答していると話が循環して同じ質問を繰り返すことがあるのだが、そこまでいけばシーライオニング的なものではなくシーライオニングと認定して議論を打ち切ってもよいはずだ。逆に真面目に質問をしているのに、シーライオニングだとレッテルを貼られて困る? — その質問が論点にどう関わっているか説明すればよいから無問題!

*1Just asking questions - RationalWiki

*2専門は経済学ではないそうだが院卒の人に「需給によって価格が変化することはあるのですか?」と聞かれた事があるが、本人はきっと大真面目であった。

*3sexual objectificationで典型例が観察される。訳のひとつの「性的客体化」を見て、「客体」が行為の対象になる存在という意味だからと言って、sexual objectificationを男性が性行為したがる対象にすると言う意味で、つまり扇情的な格好や仕草を女性にさせることのように解釈している人々がいるのだが、sexual objectificationは性欲に突き動かされ人格をモノのように粗雑に扱うことをさすのでおかしい。実在人物へのセクハラ行為は該当しても、架空の女性キャラクターのように人格では無いものはどのように描かれてもモノなのでobjectifyされない。連想ゲーム的に用語をぼんやりと捉えてしまうと、ミスリーディングな議論が展開されることになる。

*4関連記事:人工知能学会の学会誌のアンドロイドのイラストについて

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