2020年6月5日金曜日

「コロナ自警団」はファシズムか? — 他人にうるさいノイジー・マイノリティでしかないから

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止のために、政府や地方自治体が要請した営業自粛やマスク着用などを他者に強く求める「コロナ自警団」などと呼ばれる人々が出現している*1のだが、歴史社会学者の田野大輔氏が、彼らの行動はファシズムに通じる行為であり、それらの行為を見かけたら他人事と傍観するなと主張しだした*2。確かにファシズムと共通する点もあるだろうが、よくある現象なので適当にいなしておけば良いように思える。

田野氏の主張は、「コロナ自警団」の指導者の命令を攻撃的手段で他人に強制していく側面が、ナチスのプロパガンダに乗ったユダヤ人迫害に似ていると言う話なのだが、ルワンダ虐殺などの事例研究などを見るに用意周到に準備しておかないと、そうは多くの人が迫害をはじめたる事は無い。迫害を容認しがちかも怪しい。田野氏が挙げている図書室に突撃隊がやってきてユダヤ人を追い出そうとした事件でも、突撃隊と騒乱を起こした人がいない一方で、その場にいたユダヤ人が突撃隊に突き出されたわけでもない。突撃隊に非協力的であった。自粛要請などが無くても、リスクを感じたら憤慨して文句を言い出す人々はいるが*3、そういう人ではないであろうか。そもそも、ナチスに限らず政党が暴力装置を抱え込んでいるワイマール共和国と今の日本は随分違うと言うか、日本の公権力は「コロナ自警団」を認めていない。

「居酒屋に怒鳴り込んで閉店を要求したり、パチンコ屋で入店を待つ客に罵声を浴びせたりする人」に言及されているのだが、威力業務妨害や強要罪(の未遂罪)や名誉毀損罪や侮辱罪などになる。既に威力業務妨害で捜査されている人と、脅迫で逮捕された豊島区職員がいる。いちいちすべては逮捕されないと思うが、「コロナ自警団」は違法行為。第3者が一緒になって対抗する必要は無い。スマホで「コロナ自警団」の行為を動画撮影しておくなどするのは、嫌がらせを受けている人や警察のためになるかも知れないが。なお、市役所や警察に通報する行為は、スルーされるか、市役所や警察から要請が来るぐらいだろうし、そもそも第3者は知りようが無い。第3者も「「コロナ自警団」はいけませんね」と批判する事はできるが、「コロナ自警団」はそういうのに聞き耳は持たない。

こういうわけで「コロナ自警団」にはファシズムと共通点がありうる一方で、明らかな相違点が多くあり、他人にうるさいノイジー・マイノリティでしかないように思える。欧米のポリティカル・コレクトネスに熱心なリベラルのようになるかもだが、昔のファシズムや最近のアンティファのように大きな問題に発展する可能性は小さい。「コロナ自警団」への有効な対抗措置が無いのであれば、声を挙げて制度変更を求める必要があると思うのだが、今の日本では色々な法的対抗措置が可能だ。田野氏はレイシストしばき隊の行為に対して声をあげていないと思うが、しばき隊リンチ事件で自滅した。こういうわけで、特段、「コロナ自警団」に対抗して声を挙げる必要が無い*4。警察が動いてくれないなどの問題が生じれば別であろうが。

*1ネット・ジャーゴン的には「~警察」の方がよく見るが、「~(の誤用/と言う誤用を取り締まる)警察」では無いし、公権力と私人の行為は分けないと混乱を招きかねないので、本稿では新聞や雑誌で使われる「コロナ自警団」とする。

*2「沈黙」がもたらすもの――「自粛警察」に見るファシズムの危険性(田野大輔)|大月書店|note

*3東日本大震災後に問題になっていたが、花火大会が中止に追い込まれている。他にも一昔前のレイシストしばき隊の行動や、最近までのツイフェミのメディアへの難癖などがある。

*4自粛要請で実行力があるのか問題の方が、政治的な話題になりそうである。

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