2020年4月30日木曜日

東京新聞に掲載された抗体検査によって市中感染の程度を調べた結果に、感度と特異度による補正をかけると

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東京新聞が「<新型コロナ>抗体検査5.9%陽性 市中感染の可能性 都内の希望者200人調査」と言う記事で、立川市の久住英二医師のウェブで希望者を募集した抗体調査の結果を紹介しているのだが、感度と特異度の補正をしていないようなので補正してみよう。

検査は、感度が低いと偽陰性が増えて過小推定になり、特異度が低いと偽陽性が増えて過剰推定になる。陽性者数をそのまま感染者数の推定値とせず、補正すべきだ。感染者数・感度 + 非感染者数・(1 - 特異度) = 陽性者数 となるので、非感染者数 = 観測数 - 感染者数に注意して、感染者数 = {陽性者数 - 観測数・(1 - 特異度)} / (感度 - 1 + 特異度)。

「大手繊維メーカーのクラボウが輸入した試薬キット」は、「中国の臨床試験データでは、感度は94.03%で、特異度は97.02%だった」だそうだ*1。この値が正しいとすると、202名のうち5.39名が真の陽性で、母集団になる東京都民(?)の感染率の推定量は2.67% (95%信頼区間0.43%~4.90%)となる。この値はかなり高いが、都内に感染者が蔓延していると結論を下すには早い。

そもそも論になるのだが、市販されている抗体検査キットは特異度がもっと低いと言う話もあり*2、疫学調査を行う前に抗体検査キットの性能評価をしないといけない*3。仮に調査に用いられた抗体検査キットの特異度が0.95だとすると、感染率の推定量は0.33% (95%信頼区間-0.47%~1.11%)になり、ほとんどゼロと言う事になる。特異度が0.02小さいだけで話ががらっと変わってしまう。

他にも、サンプリング・バイアスの問題が残る。ウェブで希望者を募集しており、感染可能性が高い人が参加しているかも知れない。実際、医師の比率が高いことの他、「一カ月以内に発熱のあった人は五十二人、同居者でコロナウイルス感染者がいる人は二人、PCR検査を受診したことがある人は九人。PCR検査で陽性反応だった一人も含む」とあるので、東京都民を代表しているとはいえない。

*1販売元が異なるが、手法が同じなので恐らく同じ製品である。

追記(2020/05/04 13:58):ADS Biotec社のカタログには、226名の中、感染者40名のサンプルで特異度100%と書かれていた。違う製品かも('-' )\(--;)BAKI

*2新型コロナ、既存の一部抗体検査は「信頼できない」=ロシュCEO - ロイター

*3新型コロナ抗体検査の性能評価 厚労省が赤十字に依頼 | 化学工業日報

2 コメント:

Unknown さんのコメント...

いつも、貴重な情報ありがとうございます。
クラボウの情報では、
中国で両キット合わせて約1,000の臨床試験を実施:
IgM(臨床試験538例): 陽性判定率 82.58%、陰性判定率 100%、正診率 95.72%
IgG(臨床試験521例): 陽性判定率 76.38%、陰性判定率 100%、正診率 94.24%
のようです。

陰性率が特異度を示しているのかよくわからないが。

陰性率は、26万くらいの母数が書いてあった、もう少し、細かいデータあったけど、残念ながらみつからなかった。

uncorrelated さんのコメント...

>> Unknown さん
ありがとうございます。しかし、トレードオフになりがちな感度も特異度もかなり高いですね。

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