2019年7月13日土曜日

山岡重行が批判する北田暁大『社会にとって趣味とは何か』の標準得点の問題点について

このエントリーをはてなブックマークに追加
Clip to Evernote
Pocket

社会心理学者の山岡重行氏が、社会学者の北田暁大氏が『社会にとって趣味とは何か*1で行った、「夫は外で働き、妻は家庭を守るほうがよいと思う」*2などの質問に、あてはまる(4点)/ややあてはまる(3点)/あまりあてはまらない(2点)/あてはまらない(1点)の4択で答えてもらったアンケート結果の集計方法について、批判を通り越した非難を展開している*3。分析手法はすべて公開されているのだから、不適切な分析であっても捏造とは言えないと思うのだが、それはさておき標準得点は使わない方が良かった。

北田氏は著作で標準得点のグラフ(図8-4;p.291)を参照しつつ、「二次創作好きの女性オタクと、男性二次創作好きオタクとで正負が逆」(p.292)としているのだが、標準得点なのでここでのゼロは平均値でしかない。標準化前の数字であれば、回答の文面から2.5点を基準にジェンダー規範は逆と解釈することができるのだが、標準化することで情報が落ちてしまい、男女のジェンダー規範が同じ方向で強弱の差があるのか、違う方向になっているのかが分からなくなっている。分かりやすく差異を目立たせるために処理したと思うが、この場合においては分かりづらくなっている。

ここは標準化をしないで、信頼区間*4をつけたグラフを作っておくべきであった。結果はやってみないと分からないが、山岡氏の提示したグラフと、山岡氏の「統計的な差があるのは2項目だけ(赤とオレンジ)」と言う情報からすると、「もし夫に充分な収入があるとしたら、妻は仕事をもたない方がよいと思う」と「結婚したら、みんなが子どもを持ったほうがよい」は、男性オタクと女性オタクで2.5基準で上下逆か、片方だけ2.5を棄却しない可能性が高い。「もし夫に充分な収入があるとしたら、妻は仕事をもたない方がよいと思う」は、女性3群が有意に2.5より低くなる可能性があり、男性に出てしまっても男性オタク群は2.5より大、他は小なので、男性オタク群は保守的と言う解釈を加えられる。「結婚したら子どもを持ちたいと思う」も、男性オタク群だけ有意に2.5を超える可能性があり、運がよければ腐女子群も有意に2.5を下回って、堂々と逆と言える。

一昨日、この件について北田氏は反論をあげてきた*5のだが、ちょっとポイントが違う気がする。標準化がいけないと言うわけではなく、ここで標準得点を使う意義は何かを聞かれていると考えるべき。実際、標準化が情報を増やす事はせずに混乱を招いているし、北田暁大氏が行いたい解釈には向いていない*6。やや強引だが、あてはまるならば保守、あてはまらないならばフェミニストと解釈できる質問をしているのだから、その情報もうまく解釈に取り込むべきだ。まぁ、ぱっと見の勘ではあるが、グラフを作り直したら山岡重行氏の批判に対して正面から答えられるかも知れないので、ちょっとやり直してみて欲しい。え、有意性がでなかったらどうすればよいって? — マンガ・アニメがテーマだけに「先生の次回作にご期待ください」で*7(´・ω・`)

*1既に第2章第8章に関して批評しているのだが、ask.fmで御題がふってきたのでこのエントリーをあげた。

*2この質問、「家庭を守る」ではなくて「家事や育児に専念」と書くべきであったと思う。

*3山岡重行先生の腐女子統計講義 - Togetter

*4群と群を直接比較するのであればガブリエル比較区間がよいのだが、ここではまずは2.5と比較したいので一般的な信頼区間を推奨している。なお、12類型あるので多重比較になっており、厳密には多重比較を考慮にいれた検定を行う必要がある。具体的にはBonferroni法やHolm法などで補正すれば済む(Rだとp.adjust関数でP値を補正できる)。グラフ自体は補正なしで書いておいて、注か本文で検定結果を示せばよいであろう。

*5山岡重行聖徳大学講師の拙稿への「批判」と統計学理解の問題及び研究教育倫理の重篤な問題について② 平行軸プロットにおけるスケールの表現|北田暁大|note

*6二つの群を比較して、より保守的/フェミニスト的と言う話をしたいわけではなく、それぞれの群を保守的/フェミニスト的のどちらかに判定をしたいように読めた。

*7ジェンダー規範が逆ではなく、どちらかの方向への強弱で説明すべきと言うことになる。2.5をはさんで有意に異なるが、どちらも2.5は棄却しないような場合、どう解釈すればよいかは定かではない。まぁ、検定結果に留意しつつ「厳密ではないが、逆」としても、そうは怒られたりはしないと思う。

2 コメント:

北田暁大 さんのコメント...

なおこの論点についてはピアグルーブのかたから、Diverging Stacked Bar Chartsというリッカート尺度において用いられる棒グラフ(Robbins and Heiberger (2011)
Plotting Likert and Other Rating Scales
Proceedings of the. Section on Survey Research Methods, JSM 2011, 1058-1066.)を作成するように勧められました(これ点の問題は山岡氏も同様)。割合が分かるだけでなく、平均値の位置も分かるとのことで、十分に理解したうえで作成してみたいと思っています。
Diverging Stacked Bar Chartsが芳しくなく、間隔尺度とみなして平均値をプロットするのであれば、平均±標準偏差の形式によって、せめて各群の標準偏差の情報もグラフに載せるように、とも。ある程度勉強して理解し納得してから試みてみたい思います。

北田暁大 さんのコメント...

すみません、訂正です。ビアグループの肩からご指摘いただきました。
×割合が分かるだけでなく、平均値の位置も分かる(Robbins and Heiberger 2011)。
○平均値の位置は分からないが、中間点よりもプラスになっている割合、および、中間点よりもマイナスになっている割合が分かりやすい(Robbins and Heiberger 2011)。

コメントを投稿