2018年12月1日土曜日

凶悪犯罪は経済活動の邪魔になる

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当たり前に思えるが、実データで観測するのが難しい社会現象は多い。例えば、凶悪犯罪は経済活動の邪魔になると言う話は、経済が悪くなると治安が悪化する効果も予想されることから、小うるさい経済学者が納得するような分析で裏付けることは難しい。しかし、上手い自然実験を探し出して、これを確認した人がいた。

マーシャル経営大学院のSandra Rozo助教は、凶悪犯罪が横行し、世界2位の他殺率だったコロンビアが、アルバロ・ウリベ政権の治安維持の強化方法に着目して、凶悪犯罪発生率と経済活動の関係を分析した*1。ウリベ大統領は自分への支持率が高い地方自治体を優先して治安強化をしたので、経済が治安に与える影響を無視して、治安が経済に与える影響を分析できるそうだ。実際、ウリベ政権前の6年間の治安の変化は、2002年の大統領選でのウリベ大統領への支持率に関係が無かった。そして2002年から2010年のデータを分析したところ、凶悪犯罪を1%減らすと民間部門の生産は0.4%向上し、暴力が少ない地域は実質/名目賃金が上昇する上、所得向上による凶悪犯罪の減少と言う正の循環が働くようになったそうだ。コロンビア全体での48%の凶悪犯罪の減少は、19.6%の総生産拡大をもたらし、死亡や犯罪率低下の長期効果を考慮に入れれば社会的便益はもっと大きい。

成長戦略よりも治安維持とは書いていなかったが、やはり治安維持は経済成長の要のようだ。そう言えば治安維持ではないが、ブラジルのデータでは汚職があると経済成長が疎外されるという研究もあった*2。だいたい成長しない開発途上国は、内戦や汚職でおかしくなっている。

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