2018年4月6日金曜日

辛淑玉のドイツでの講演はデマ・印象操作によるヘイトスピーチ

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「Fact Check 福島」の『ドイツ二都市で開催された講演会で福島に関するデマを拡散』と言う記事が、辛淑玉氏への差別に加担している、分断を加速する扇情的な記事と批判され、『ドイツ二都市で開催された「反原発とヘイトクライム」講演会』と題名や本文からデマ・印象操作と言う表現が削られる騒ぎになっている。中立性を装わないといけないファクト・チェック・サイトで、デマや印象操作と言う結論を自ら出すのは下手だと思うが、辛淑玉氏の言動を正当化しようとする人々もいて頭が痛い。辛淑玉氏の発言を検討してみたのだが、明らかにデマ・印象操作である。

1. 遺伝子異常に関するデタラメ

「○○人は△△の影響で遺伝子レベルで変異が起きて、障害を負っている」なんて無根拠に言ったら間違いなくヘイトスピーチだが、辛淑玉氏のドイツでの講演内容はまさにこれである。細胞個々における遺伝子の異常は様々な原因で起きるわけだが、修復されることが分かっているので、低線量で障害を負うことはまず無い。また、生殖細胞に異常がある場合は、大抵は流産するので、後の世代に影響は出ない。広島・長崎の原爆投下による被ばく二世を対象とした調査(F1 Study)でも、そんな影響は観察されていない。「壊れた遺伝子が、自分の代に出るのか、子どもの代に出るのか、その後に出るのかがわからない」も、孫や曾孫の代にだけ発現する遺伝子異常は知られていないからデマだ。だから、UNSCEARが「すべての遺伝的影響は予想されない」と明言するわけだ。

2. 小児甲状腺がんの発症率に関するデタラメ

「こどもの小児がんは、普通百万人に一人、でもまぁめずらしい、と言われているもの。それが30万人に落として、もうすでに百人以上出ています」も、デタラメである。小児甲状腺がんは、進行が極度に遅いがんで、通常はわざわざ検査をしないので福島県のように一斉検査を行なうと罹患率が高めに出る。また、検査装置によって検知できる腫瘍サイズが異なる。このため、福島県で実施したのと同じ機器で、他地域でサンプリングして調査を行なう必要がある。環境省は2014年3月までに、長崎市・甲府市・弘前市の無症状の2~18歳を対象に検査を実施し、福島県と罹患率に統計学的に有意に差が無いことを確認した。

3. 食品の放射能汚染とその影響と対策に関するデタラメ

食品の放射能汚染についてもデタラメだらけである。「食物連鎖といって、沢山の放射能が、どんどんどんどん濃縮」「小さな魚から、どんどんどんどんどんどん、より放射線量の高い、大きな魚へと多くの放射線量が蓄積」とあるが、現在環境中にある放射性物質の大半を占める放射性セシウムは生物の体内に蓄積されない。水銀やストロンチウムとは違うのだ。実際、今回の事故で唯一、体内に大量の放射性物質を取り込んでいたキノコを採取し、イノシシを狩り捕食していた通称「イノシシおじさん」のモニタリング結果があるのだが、食生活を変えてもらったらあっという間に不検知となった。「売れないのは、マーケットのせいであり、放射線のせいではないということになった」は文意がとりづらいのだが、「~ということになった」と言うのは事実と反する場合や、事実か否かしっかり確認していない場合に用いる表現であり、印象操作である。「本当は日本の全部の作物を調べなければいけないけども、日本はそれをやっていません」もデマで、福島県に限らず放射線量は検査している。

4. 住民の避難についてのデタラメ

住民の避難についても問題がある。「最大の問題は、そこに人々が放置されたということです。線量の高いところで」とあるのだが、2011年3月12日には半径20Km圏内に避難指示が出ている。半径20Km圏外で高線量地域は、浪江町、葛尾村、飯舘村になるが、年間20mSvを超えるような所は、その中でも限られていたと言うか、実際には放射線量は急激に低下していったので、年間20mSvの被ばく量を超えることは無かった。むしろICRPのガイドラインでは、現在被ばく線量(追加被ばく線量1mSv/y~20mSv/y)であれば社会的・経済的状況を考えて住民判断で留まることができたはずなのだが、菅政権が頭ごなしに避難命令を出してしまったのが失敗だったとすら言える。「ご覧の通り、もう誰もいません」と言っても、放射線の影響ではなくて、菅直人総理(当時)の趣味の問題だったわけだ。

5. 低線量の被ばくの影響に関するデタラメ

「放射能というのはどんなに少ない線量であっても、人間の体には毒」と言っているが、放射線防護においてLNT仮説を採用する一方で、低線量の被ばくが健康に害を及ぼす事は確認されていない。低線量の被ばくまで危険視する放射線防護の専門家はいない。野菜や果物などカリウムを含む食品には、必ず放射性カリウムが含まれる。花崗岩が多い関西や欧州は毒気が多く危険な地域になるし、辛淑玉氏のように飛行機に乗ってドイツにいけば大量に被ばくすることになる。福島市の住人の何十倍もの被曝量がある国際宇宙ステーション上の宇宙飛行士の放射線障害が心配されることはほぼ無い。ラジウムの上で50年生活し、年間30mSvの被ばくを続けたが、別に健康に支障はない92歳の女性の話もあった。たまたま放射線に影響されない人々の話だと思うかも知れないが、統計解析によっても、低レベルの放射線の被ばくの影響は観察されていない。

6. 辛淑玉氏の擁護は弱者を叩くことになる

不安の表明だから非難にあたらないと言って擁護する人々もいるのだが、デタラメを断言して回っているのでデマの拡散である。原発事故の報道が落ち着いた2015年にもなって、こういう稚拙な話を延々とできるのは、よほどインプットの仕方が偏っているか、本当に「デマを広めて人々を扇動しようとする活動家」なのであろう*1。いまさらデマは広がらないと思うが、万が一、辛淑玉氏のデマが広がれば、福島第一原発の周辺地域の危険性を無意味に強調することで復興の阻害になるし、存在しない遺伝的疾患を確信させることで結婚や就職に関して福島県民の不利益になる。辛淑玉のデタラメな話は、原発災害の被害者たちに、さらなる不利益をもたらす可能性があるわけだ。辛淑玉氏の擁護は弱者を叩くことになるのだが、リベラル左派を自認する人々はその覚悟はできているのであろうか?

*1なお、辛淑玉氏だけに限らない。科学リテラシーの専門家を名乗る富山大学の林衛氏が、無根拠に低線量放射線による鼻血発生説を唱えていたし、何かトンデモ説を聞きつけては専門家にリプライをつけて回っている関西在住の女性もいた(関連記事:不安を肯定してもらいたい人々)。青プリンこと群馬大学の早川由紀夫氏は、福島県の農家が毒物を出荷していると誹謗し、所属先から訓告を受けているし、岡山大学の津田敏秀氏も、岩波「科学」に掲載した論文の分析手法が恣意的であるとして、非難を受けている。

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