2017年10月31日火曜日

報道機関がまだ森友学園問題を終わらせてはいけない理由

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個人投資家・作家の山本一郎氏が森友・加計学園問題を、現状の証拠類を見る限りほぼ難癖に近いと断言し、一部の新聞各社だけが問題にしていて滑稽だと批判している*1。どうも先週出てきた会計検査院のダメ出し*2を頭に入れていなかったようだ。森友学園への国有地の売却に関して、撤去費は2億~4億円程度で済み、値引き額は最大約6億円過大であり、また売却交渉の関連文書の管理にも問題があったと判断したと報じられている。疑惑の土台は固められた。

対面に比べて教育効果の低いオンラインラーニングも使いよう

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インターネットが普及してから、様々なオンライン教育サービスが提供されてきた一方で、対面教育に比較して教育効果が低い事が指摘されてきた。米国の大学のデータを分析した研究*1によると、学業成績が悪く、履修単位数が少なく、中退率が高い*2。このようにオンライン教育はダメなサービスとしてイメージが定着しつつあるのだが、何も無いよりはがマシだと言う研究もある*3

2017年10月28日土曜日

「曲がった空間の幾何学」で掴みは万全

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数学の中で、大学までとそれ以降で風景が大きく変わるものが幾何学だ。中高までの独立感のある図形の話ではなくなり、解析学や線形代数などの発展としての話になる一方、群が導入され、様々な不変量が出てきて抽象化も進み、ぐっと話が難しくなる。また、中高で幾何学に全く触れないことは無いと思うが、数物系でないと卒業までリーマン幾何学、位相幾何学に縁が無いことも多い。

2017年10月26日木曜日

被告人が悪いのでは無いのです、被告人の遺伝子が悪いのです

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米国では既に、被告人の遺伝子を理由に減刑を勝ち取ろうとする弁護士が現れている。実際、MAOA分子の遺伝子*1が、非社会的で犯罪的行為と関連があることが知られており、2009年にそれを理由に減刑された判決が宣告されている。遺伝子工学全盛の時代である。しかし、遺伝子を理由に陪審員の同情を買うのは、まだまだ難しいようだ(POPSCI)。

2017年10月25日水曜日

ブラジルで電子投票を導入した結果

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開発途上国で貧困層への公共サービスが小さいのは、その政治的影響力が小さいためだと言われている。選挙のある民主国家で、貧困層が少なくない数を占めている場合も同様であると言う研究もあり、影響力を増すような制度改善の方法も色々と提案されている。しかし、実現可能性の低い提案をするよりも、投票用紙を電子機器に変えた方が手っ取り早いようだ*1

2017年10月24日火曜日

リフレーション政策を唱えても選挙の票にはならない

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今回の衆議院選挙で、リフレ派議員の馬淵澄夫氏、小沢鋭仁氏が落選したことで強く思うようになったのだが、大規模な量的緩和を中心とするリフレーション政策を唱えても票にはならない*1。個別の議員が唱えたときはもちろん、党の方針として打ち出したときも、そんなに集票能力の高い政策では無い。そして、仮にリフレ政策が機能したとしても、支持率の向上にはつながらない可能性が高い。

2017年10月23日月曜日

野党が仲良く選挙協力をする方法

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今回の第48回衆議院選挙は、解散を決断した安倍総理もびっくりのドタバタ劇であった。少数派は合併して大きくなるか、綿密な選挙協力をしないと勝てないのが小選挙区制度なのだが、選挙のために主義主張が異なる集団と手を組む事に耐えられない政治家が多いようで、統一政党の分裂癖はなくならない。

2017年10月21日土曜日

就業者数の減少を伴う完全失業率の低下は、景気の悪化と言えるのか?

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ネット界隈のリフレ派では、2003年からのと2009年からの景気回復期で、就業意欲喪失効果で非労働力人口が増えており、完全失業率の改善はまやかしで、有効求人倍率の改善に関わらず雇用が悪化していたと言う説がよく唱えられている。

2017年10月20日金曜日

全要素生産性(TFP)の推移を確認して、国士様になってよ!

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国士は自分の事は省みずもっぱら国の事を心配する人物、国士様はネット右翼の事を指す。どういう機会で彼らが憂国の士になったのかは知る由も無いが、日本人である限り、あなたがそうなるかも知れない魔法の数字がこの世に存在する。全要素生産性(TFP)の推移だ。慣習的には毎年の変化率を見る*1のだが、乗算をして水準の変化のグラフにしてみた。

2017年10月19日木曜日

就業者数で景気判断をするとアベノミクスは微妙になる

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ネット界隈のリフレ派は、2012年末までの民主党政権に景気が底をうっていたのを認めると心の中の何かが壊れるのか、最近は景気遅行指数の就業者数をもって第2次安倍政権になってから景気が良くなったと主張している。マネーストック、期待インフレ率、インフレ率はどうでもよくなったのか、景気一致指数の有効求人倍率を見なくて良いのかも気になるが、就業率ではなく就業者数をみると色々と奇妙な事が起きるのを指摘しておきたい。

開かれた独裁国家が分かる「物語 シンガポールの歴史」

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気づくと産油国を除けばアジアでもっとも豊かな国となったシンガポールは、実業家上がりのオピニオン・リーダーに理想郷のように思われているようだ。しかし、実際にどういう国か、マーライオンが実はしょぼい*1以上の事を知っている人はそんなにいないと思う。世間一般にもたれているのは、経済活動に勤しむオープンな都市国家と言うイメージであろうか。

2017年10月17日火曜日

賭け金を全て行動経済学に載せない方がよい理由

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2017年のノーベル経済学賞もしくはスウェーデン銀行協会賞は、行動経済学の大家であるセイラーに決まった。2002年にカーネマンらと同時受賞をしていてもおかしく無い人で、今回の単独受賞の理由を訝しがる人もいるが、賞に相応しい業績を持つ人物であるのは間違いない。あぶく銭を軽率に使ってしまう限定合理性、国や地域によって公正な振る舞いに差があることを意味する社会的選好、夏までに痩せると宣言し菓子を貪る自制心の欠如を、存在証明し分析した功績がある*1。しかし、これで行動経済学の知見を鵜呑みにするべきかと言うと、そうでもない。

2017年10月16日月曜日

公的年金支給開始年齢の引き上げの60歳以上就業者数への影響

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はてサのid:scopedog氏が「55~64歳の年齢階級で就業者数が安倍政権になって増えた理由は、年金支給開始年齢の引き上げが2013年から開始されたから」と主張しており、その理由として「55~64歳の年齢階級で2013年から15歳以上人口に対する就業者数や非労働力人口の割合の推移傾向が変わっている」からだと主張している*1。明らかに変なのだが、ブックマークのコメント欄でちゃんと突っ込んでいる人がいなかったので指摘しておきたい。

経済統計でデッド・キャット・バウンスと言われても

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ネット界隈のリフレ派が好む用語に、デッド・キャット・バウンス(Dead Cat Bounce)と言うのがある。死んだ猫でも高い所から落とせば跳ねるように、急落している最中に一時的に回復傾向になる株価の動きを指す。今では株価以外の経済指標にも使われるようになったが、これで資本市場以外の説明をするのはやめた方がよい。そのような現象が頻繁に見られるわけではないし、理屈が全くつかないからだ。

男と女は違うことを認めないと、女が困ることになる

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男女で薬剤の効き方や副作用が異なり、特に排卵や月経などの影響を考慮した治験など臨床実験を行なわないと、女性が困る事になると言う話がPOPSCIでされていた*1。紅斑性狼瘡、尿路感染症、心臓疾患などにおける性差は広く知られているので、従来から認識されていた話だと思うが、Nature Communications誌に掲載された研究のマウスを使った大規模実験で性差の影響が改めて確認された。

2017年10月15日日曜日

アレな評論家の得意技モット・アンド・ベイリー論法

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弁当が旨そうな話ではない。よく炎上する評論家の得意技に、モット・アンド・ベイリー論法(Motte and bailey)と言う立派な名前がついていたと言う話である。

その主張が過激でトンデモであると非難されると、もっと穏当なことを主張している、それが分からない人がおかしいと弁解をする文筆業の人を見かけたことがあるであろう。主張が過激なモノにも穏当なモノにも読める曖昧作文を行なっているのが問題なのだが、この事には反省の色は見せない。

2017年10月14日土曜日

求職意欲喪失者や縁辺労働者や不本意なパートタイマー労働を考慮した失業率は、完全失業率とよく連動

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完全失業率の改善を示されても、雇用環境が余りに悪いと職探しをしても仕事が見つからないので、失業者が求職を止めてしまう就業意欲喪失効果や、パートタイマーへの不本意就業による妥協による低下であって、雇用環境は実は悪化していると主張する人々は少なくない。ネット界隈のリフレ派が2012年までの民主党政権時の、反安倍政権の左派が最近の完全失業率の低下に対して、このように主張するのを見かけたことがある人は多いであろう。しかし、求職意欲喪失者や縁辺労働者や不本意なパートタイマーを考慮した失業率を作っても、完全失業率とよく連動する。完全失業率を見ていれば、だいたい間違いは無い。

小池百合子と前原誠司の初めての共同作業の結果

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2014年の衆院選・小選挙区の与党・自民党と公明党の得票率は49.54%に半数未満に留まったが、獲得議席率78.64%に達した。野党は得票率50.46%と過半であったが、議席率は21.36%でしか無かった。小選挙区制度はその選挙区で第1党のみが議席を得るので、地域政党でも無い限り、支持率が中途半端な党には不利な制度だ。野党が乱立している今の日本では、このような結果がもたらされる。

2017年10月12日木曜日

東浩紀の「積極的棄権」が選挙のボイコットを勧めていないとして

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文芸評論家の東浩紀氏が、衆院選「積極的棄権」の署名活動を開始したそうだ。選挙の棄権を呼びかけるとは何事かと非難され、それに投票の棄権を呼びかけているものではないと弁解する問答がされている。何ともポストモダン的状況である。

2017年10月9日月曜日

妊婦もインフルエンザの予防接種をしよう

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POPSCIで、インフルエンザ・ワクチンの接種で流産の確率が高まることはないので、妊婦にも注射した方が良いと言う話がされていた。米国で、インフルエンザ・ワクチンの摂取と流産の相関関係を示す研究が出たと言うニュースが出回って、不安が広まっているらしい。

2017年10月8日日曜日

希望の党の経済政策ユリノミクスの整合性

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憲法改正論議容認と消費税増税凍結以外に関して、小池百合子都知事が率いる希望の党の“政策”が出てきた。社会保障政策をベーシックインカムに転換するところが注目されているが、そこは「検討」なので無視しよう。他の具体的な話は『「希望への道」しるべ12のゼロ』と題されて一覧になっており、

2017年10月3日火曜日

ヒトES細胞を試料に用いるための生命科学者による倫理的正当化

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生命倫理について、人文系の哲学者の主張を見つけることは容易いと思うが、生命科学の研究者がヒトES細胞を試料に用いることを、どのように倫理的に正当化しているのか、はっきり確認できることは少ない。

実際問題、学内の研究等倫理審査委員会をパスできれば良いわけで、それ以上の関心を持っている研究者は少ないのであろう。しかし、さすがに偉い人になると外部との折衝があるのか無視するわけにもいかないようだ。そのツイートをよく見かける中辻憲夫氏の著作『幹細胞と再生医療』の第5章には言及があった。

2017年10月2日月曜日

核兵器なしで北朝鮮はソウルを火の海にできるのか?

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北朝鮮と米韓が戦争になれば、韓国の軍や市民に多大な犠牲がでるという話をよく見かける。北朝鮮が核攻撃能力を持たないにしろ、朝鮮半島での戦争は韓国に多大な被害が出ることになっている。朝鮮半島情勢に詳しいジャーナリストの辺真一氏や高英起氏の記事も、退役軍人からのインタビューでもそういう話を前提にあれこれ推測を行なっている。しかし、よく考えるとこれらの話に大した根拠は無い。