2017年8月26日土曜日

そんなデータで男女間の統計的差異を認めてしまっていいと思う?

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男女の身体能力の差は激しい。見た目の筋肉のつき方から自明なところもあるが、女性のトップアスリートでも平均的な男性の筋力に達しているわけでもないし、実際に競技をさせても如実に差が出る。これと同様に、様々な職業における就業能力においても男女の差があると認めてしまう人も少なく無い。実際、慎重にデータを見ても男女の就業能力に差異があるように見えるときもあるのだが、実は経路依存性のある問題かも知れない。

2017年8月24日木曜日

外交だけではどうにもならない事が分かる『戦前日本の「グローバリズム」』

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お茶の間で人気の国際政治学者・三浦瑠麗氏の“戦前の方が国家観・歴史観を持ち、理念を掲げられる日本人が育っていた”論の元ネタとして『戦前日本の「グローバリズム」』が紹介されていたので拝読してみた。戦前の政治指導者や思想家にトンデモ感を感じたので、三浦女史の元ネタでは無いと思うが、1920年代後半から終戦までの日本の外交政策や市民意識に関する通説を否定している本で、中身自体は興味深かった。

2017年8月21日月曜日

ポモ好きも知るべき蝋板と蜜蝋の違い

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ポストモダン思想家のデリダが、人々の性格や能力などの差異における生得的・遺伝的な要素の影響を否定しようとするピンカー定義のブランク・スレート仮説の信奉者であるか否かについて、文芸評論家の山川賢一氏とポモ好きの思想史研究者の仲正昌樹氏が議論を展開しているのだが、山川氏が傍証としてデリダがブランク・スレートと同じ意味になる「脳髄の蝋板」と言う表現を使ったと言う指摘をしたところ、仲正氏が『デリダが「蝋 cire」という比喩を使っているのは、物質の本質をめぐるデカルトの「蜜蝋の分析」を念頭に置いているから』と反論している。蝋板と蜜蝋は随分と異なる概念で、話が噛み合っていない。

2017年8月18日金曜日

ピンカーは近代哲学ではなくポストモダニストを含む現代のブランク・スレート信奉者を非難している

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ポモ好きの思想史研究者・仲正昌樹氏が、『ピンカーが(「人間の本性を考える」で)哲学における「ブランクスレート」説として念頭に置いているのは、“ポストモダン”ではなく、イギリス経験論に代表される近代哲学全般』と主張していたので検証してみたのだが*2、イギリス経験論自体は肯定もしていないが、批判もほとんどしていない。ピンカーが熱心に批判しているのは、彼らの説を極度に単純化した後の世代の心理学者・社会学者・思想家、特に20世紀以降に新たな科学的知見を政治的に拒絶した人々であって、近代哲学全般を批判していると言うのは勘違いに思える。また、デリダなどポストモダニストへの言及もそれなりの分量、ある。

2017年8月16日水曜日

地下鉄の科学 - トンネル構造から車両のしくみまで

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地下鉄は現代的な大都市には必ずある身近な交通機関なのだが、公共交通機関の中では地味な扱いである。地下だけに写真も撮りづらいから撮り鉄も被写体としづらいようだし、路線網だけに狭いスポットから全体を見渡せるわけでもないので、巨大建造物が大好きな30代以降の自称少年/少女も、わざわざ地下鉄を見に行こうとは行かないようだ。しかし、列車を地下に走らせるには穴を掘らないといけないし、視界が悪く密閉されているので運行上の危険も増す。少し知識を深めると、面白みが出てくるかも知れない。

2017年8月13日日曜日

政党観の前に“リベラル”の意味が世代ごとに異なる

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2017年8月11日の読売新聞の『政党観 世代で「断層」』と言う記事が話題になっていた*1。曰く、若年世代にとっては公明・共産が「保守」で、維新が「リベラル」であるそうだ。これは高知大学の遠藤晶久氏と読売新聞の共同調査なのだが、予備調査として行なわれたアンケート調査*2の結果を見る限り、かなり危ういものとなっている。集計データしか示されていないのではっきりは言えないが、政党観の前に“リベラル”の意味が世代ごとに異なる可能性が高い。

三浦瑠麗っち、政治家の質を見ると戦前回帰はあり得ないよ

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お茶の間で人気の国際政治学者・三浦瑠麗氏が、8月12日の東京新聞のインタビュー記事で、「国家観・歴史観を持ち、理念を掲げられる日本人が育たなくなっている」から、「(戦前)を全て否定するのは一面的で、過去を見誤っています」と主張している。戦史をしていた人なのに、第二次世界大戦の敗北が無かったことになっていて興味深い。戦前の政治家や軍部は、勝てないケンカを売って祖国を焼け野原にしたわけで、碌な国家観・歴史観・理念を持っていなかったとしか言いようが無く、意味不明である。

2017年8月11日金曜日

内閣を支持する/しない理由は大した情報にならない

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世論調査で安倍内閣の支持率が急落し、特に首相への信頼が急落していることが注目されている。調査結果なのでアレコレ言及したくなるのだが、どういう意味を持っているのかは判然としない。そこで、支持/不支持理由の内訳の変化の傾向と、それが内閣支持率にどの程度の影響を与えるのかを過去13年間のデータから計量的に確認してみたのだが、支持/不支持率を変化させる隠れた“要因”はほぼ一つであり、支持/不支持理由の“変化”は内閣支持率に大きな影響を及ぼしていなかった。

2017年8月6日日曜日

計量分析をすると、首相辞任のトリガーは内閣不支持率

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何かと話題の安倍内閣の支持率だが、韓国政治が専門の木村幹氏が『近年の政治状況において重要な「内閣支持率-与党支持率」はまだ16%以上のマージンを持っているので、与党内の反発により政権がゆらぐ状況ではない』と言う話をされていて、その指標が重要なのは本当かと思って検証したらそうでもなかったので報告したい。大半の人には「知っている」と言われそうなのだが、近年のデータを見る限り、首相辞任のトリガーは内閣不支持率だ。