世論調査で安倍内閣の支持率が急落し、特に首相への信頼が急落していることが注目されている。調査結果なのでアレコレ言及したくなるのだが、どういう意味を持っているのかは判然としない。そこで、支持/不支持理由の内訳の変化の傾向と、それが内閣支持率にどの程度の影響を与えるのかを過去13年間のデータから計量的に確認してみたのだが、支持/不支持率を変化させる隠れた“要因”はほぼ一つであり、支持/不支持理由の“変化”は内閣支持率に大きな影響を及ぼしていなかった。
1. データセット
データセットは日テレがウェブサイトで公開している世論調査の結果を用いた。回答項目が統一されておらず、表記のブレが相当あるので、回答項目は整理統合している。分析期間は、2004年10月に「閣僚の顔ぶれに期待がもてないから」が不支持理由に入り、その後は最低限ある項目が定まるので、2004年10月から2017年7月間までとする。支持理由と不支持理由の回答率は、それぞれの中の比率になっているので、支持率と不支持率を乗じて、全体の比率に変換してから用いた。
2. 主成分分析
分析手法として、まず、主成分分析を用いた。整理後の回答項目は16項目あるので、これを直交変換して分散の大きい順番に主成分を取り出す。第5主成分までで分散の69%超の説明ができる*1が、変動の主要部分を説明するだけでも5種類の成分を考えないといけないわけで、世論調査の支持/不支持理由に、そうまとまった傾向があるとは言えない。
PC1 | PC2 | PC3 | PC4 | PC5 | |
---|---|---|---|---|---|
Standard deviation | 2.1546 | 1.5021 | 1.3013 | 1.1538 | 1.0673 |
Proportion of Variance | 0.2901 | 0.1410 | 0.1058 | 0.0832 | 0.0712 |
Cumulative Proportion | 0.2901 | 0.4311 | 0.5370 | 0.6202 | 0.6914 |
3. ロジスティック回帰
しかし、この第1から第6までの主成分分析でロジスティック回帰分析を行なうと、第1主成分でほとんどが説明できてしまう。決定係数0.9416だから、被説明変数である支持率の分散の94%が説明される。第2主成分以降は、その符号は有意ではあるが、説明力の改善に大して役立っていない。
内閣を支持する/しないと言う主成分がまずあって、他の主成分は回答比率の調整を主にしている。つまり、支持/不支持率を変化させる隠れた“要因”はほぼ第1主成分一つであり、第2主成分以降による支持/不支持理由の“変化”は内閣支持率に大きな影響を及ぼしていない。
第1主成分の説明力の強さを、グラフでも確認しておこう。完璧には説明していないが、かなりの説明力があるのが見て取れる。
4. まとめと含意
計量分析の結果から示唆されることは、人々の内閣支持/不支持理由は総合的なものであり、世論調査で理由として選択するものは、その時点でまず思いついたものでしかないという事であろう。政治学の方ではもう少しフォーマルな分析がされていて、内閣を支持する/支持しない理由の信憑性は低いことが示されているそうだが、ともかく、深くは考えない方が良さそうである。
*1Proportion of Varianceの値を合計されたし。
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