2016年8月14日日曜日

日本政府の徴税権の資産価値はゼロ

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日本政府の債務残高が年々大きくなっていることに対し、ネット界隈のリフレ派は二つの反論を良くしている。一つは、政府と日銀のバランスシートを統合すれば、日銀保有分の国債が消せるので財務が改善すると言うもので、日銀券が負債の部に計上される事を忘れているモノだ。一つは、政府資産を差し引いた純債務で見るべきと言う議論で、財務省が作成しているバランスシート*1から純債務残高を見ると債務超過状態な上に状態が急激に悪化しているので、結論に影響が無いモノだ。初歩的な会計知識や数字を確認する意欲に欠けている気がするのだが、何はともあれ反論になっていない。

ここに来て元官僚の高橋洋一氏が、日本政府の徴税権を資産計上しろと言い出した(J-CASTニュース)。

こういうと、まだ債務超過であるという批判もある。しかし、政府の場合、強制的に税金を徴収できる徴税権がある。どんなに少なく見積もっても毎年30兆円以上の税金徴収ができるのだから、その資産価値は数百兆円以上だろう。というわけで、政府バランスシートでみても、統合政府バランスシートで見ても債務超過ではない。

昔は戦時国債を外国人投資家に買ってもらうために、徴税権を担保に入れることもあったので、この発想自体は分からなくは無い。しかし、資産価値はトービンQよろしく収益に基づいて評価されるべきであって、売上もしくは粗利益によって評価されるものではない。政府は徴税だけをしていれば良いと言うわけではなく、国防にしろ、治安維持にしろ、社会保障ににしろ、国家維持のための経費を歳出する必要がある。税収から利払い以外の歳出を引いた基礎的財政収支に基づくべきであろう*2

プライマリー・バランスを見てみると赤字であり、2014年の消費増税でかなり改善はしたもののの、さらなる増税なくして大きな改善は望めないと考えられている。しかし、増税はかなりの政治的コストを必要とするため、大幅な黒字化は不可能であろう。リフレ派のように増税や歳出削減に反対する勢力は少なくない。既に通った増税法案でさえ、「これまでのお約束とは異なる、新しい判断」で効力を失う事すらある。

東インド会社のように営利企業であれば、利潤最大を目指して徴税や歳出ができるので、徴税権から利益を得ることはできるであろうが、日本政府は営利企業では無い。徴税権を生かして、国民資産を無闇に接収することは許されない。いつかはプライマリー・バランスの赤字を解消するのであろうが、大きな黒字にはならないであろう。それを割り引いて現在価値を出しても、ゼロと見なせる数字にしかならない*3。つまり、日本政府の徴税権の資産価値はゼロである。

*1国の財務書類 : 財務省

*2徴税権をプライマリーバランスではなく将来税収を割り引いて資産に計上する場合は、将来歳出を割り引いて負債に計上する必要がある。

*3増税と歳出削減などによるプライマリー・バランスの黒字化が予定されていれば、それからプラスの徴税権の資産価値を計算できることになり、これをバランスシートに計上すれば債務超過状態ではない事になる。しかし、徴税権の資産計上によって増税と歳出削減をしないために、増税と歳出削減を実行する必要があることになる。

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