2016年3月20日日曜日

非リア充につらい「夫婦格差社会」

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晩婚化や未婚率の上昇が問題とされている昨今だが、婚姻関係の議論やデータを事細かに追いかけている人は少ないであろう。また、大半の人はせいぜい3回ぐらいしか結婚しないであろうし、耳に入る周囲の結婚事例も職場や同窓のものが多いであろうから偏ってくる。だから、イマドキの結婚像を知っている人はほとんどいない。なお悪い事に問題がジェンダーに関わるために、イデオロギー色の強い論者が根拠不明な事を言い勝ちで、全体像を見誤りそうになる。

何かを調べようと思ったら、まずはバランスが良い本を読んでおく方が無難な題材なのだが、どの本を読むべきか。よくネット界隈で「夫婦格差社会 ─ 二極化する結婚のかたち」を紹介されるので、拝読してみた。シニアの偉い人と大学院生の二人で書いている新書としては異色の本だが、中で異色の手法が使われていると言うわけでもない。官公庁のデータを読み解きつつ、社会学方面を含めた先行研究を紹介している。

著者の主な主張は、ダグラス=有沢の第二法則*1のような従来の結婚像は薄れ、高学歴・高所得者のパワーカップルと、低学歴・低所得のウィークカップル、そして、そもそも結婚できない人々に分かれていると言うもので、非リア充にはつらいものとなっている。ウィークカップルは所得が低いだけではなく離婚率も高く、そもそも結婚できない人々も所得は低めだ。婚姻によって格差が拡大している。強者と強者、弱者と弱者が結びつく理由は、本書には明確には書かれていないのだが、職場・交友関係・学校などを通じて知り合った男女が結婚する確率が高いので(P.57)、出会いの中で配偶者を選択しているようだ。同類婚は多く、同じ学歴どころか、法曹など同じ職業グループに属する男女が結婚するケースも多いらしい。ただし、職場結婚自体は衰退している(P.120)。

結婚したいが出来ていない人々が挙げる理由でもっとも多いのが「適当な相手にめぐり会わない」と言うもので、自分に見合った相手にめぐり合えず結婚ができない(つり合い婚仮説)として説明される。都市と地方の比較では、都市部では恋愛経験は豊富である一方で、既婚率は低くなっている(P.179)ことからも、相手を見定めるのが大事なようだ。ただし、低年収の男性においては、恋愛や結婚にお金がかかるので、経済力が大きな障害になっているそうだ。それで、所得の低い男性を援助しましょうと書いてあるのだが、(1)お金のかからないデートが無い、(2)デート代は男性持ちであることが前提になっている所がひっかかる。また、経済力云々以前に、恋愛に不活性な人が多いような気がしなくもない。

結婚を促進する以外に、出生率を向上させるための政策提言もされている(P.140--142):(1)婚外子への差別をやめる、(2)子ども手当など経済的支援、(3)育児休業制度や保育施設のさらなる充実、(4)夫の家事参加の拡大。ここは全般的に論理の飛躍が見られる。(2)の正当化のために、子どもは公共財としての価値が増している(P.135)ので今後は社会で育てるべきだとあるのだが、結婚が子供の増加を促し労働供給と家計消費を拡大する外部経済があるので公的に援助を行うべきの言い間違いでは無いであろうか。(3)に関しては計量的には明確な傾向は得られていないようだ*2し、(4)に関しても分業した方が合理的なときに分業を辞めることにもなりかねないので理屈が想像できない。家計ではなく、女性の負担だけが出生率を決定している事になっていないであろうか。

上述以外にも気になる所はあって、ダグラス=有沢の第二法則が当てはまらなくなってきた根拠として、夫が年収200万円未満の低所得者のときの妻の就業率が、夫の年収200万円から300万円未満のときよりも低くなっている図1-5(P.16)が示されているのだが、年金受給世帯が含まれている可能性があり*3、少子高齢化の影響を受けた可能性が気になっている。とは言え、結婚に関する昨今話題についていくために、本書が良い土台になるのは変わらないであろう。最近の若者を語りたい30歳以上のオジサン、オバサンにお勧めしたい一冊である。

念のために記しておくが、結婚マニュアルではないから、自分が切羽詰っている人は他の本を読むように(´・ω・`)

*1夫の収入が高いと、妻が働く率が低くなると言う経験則。

*2何か有力な先行研究があるのかも知れないが、日本の都道府県レベルのデータで分析したときには出生率に保育所入所率は影響していなかったし、有意な傾向は観察されなかったし、社会学者の筒井淳也氏が紹介していたEngelhardt and Prskawetz (2004)でも就学前教育の入園率は出生率に影響していない

*3就業構造基本調査に夫の年齢と妻の就業状態の関係が分かるグラフが無いか探したのだが、見つからなかった。ただしオーダーメイド集計なども依頼できるらしいので、図1-5の作成方法を確認しないと本当の所は分からない。

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