2014年11月26日水曜日

職業訓練の前に読み書き算数

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大学改革に関連して、「OECDの職業大学論」で濱口氏が経済協力開発機構の職業訓練のレポートを紹介している。職業大学と言うより、専門学校と表現した方が日本人にはイメージしやすい気がするが、欧米の教育事情が垣間見れて、ある意味興味深い。

レポートの内容は、必要とされる技能が高度化しており、職業訓練で得られる技能が時代遅れで労働市場で通用しないときもあるので、教育現場、実業界、労働組合が協力して職業訓練制度を改善していくべきと言うものだ。期待される政策効果は明確には書いていないのだが、労働生産性の向上による待遇の向上と就業率の向上が狙いのようだ*1

1. 読み書き算数が重要

これだけ聞くとマトモそうなのだが、国際機関らしい雰囲気の漂うレポートだ。綺麗事を並べて、何かを隠している。第3章で高校以上の職業訓練における重要要素として、(1)徒弟制度やメンタリング、インターンシップなどを組織的に行なう事、(2)職業教育の先生自体の学習や訓練を行なう事、(3)読み書き算数の基礎学力を強化する事などが挙げられている。生徒が最新の機材に触れる機会を設けるのも、教育者が教育内容をアップデートするのも悪くはないが、読み書き算数が課題に入っているのが気になる所だ。

2. 読み書き算数があやしい労働者

欧米には高等教育を受けたのにも関わらず、取扱説明書が読めず、分数の計算も出来ない労働者が一定数いて、職につけずに苦しんでいるようだ。レポート内でOECD Skills Outlook 2013が参照されているのだが、そのFigure 2.4と2.5を見ると日本が最も高くなっている*2。裏を返すと、欧米が低いと言う事だ。失業率も欧米の方が高い*3。読み書き算数を職業訓練に分類する人は少数だと思うが、ほとんどの職場で絶対必要とされる能力になる一方で、その運用能力が低い人々が多数いるため、主要要素になるのであろう。

3. 初等教育の問題を職業教育の問題としてしまう捩れ

現在の職場で求められる職業教育の提供を目指すという大きな話を描いているものの、読み書き算数と言う初等教育の不十分さがそれに並ぶ課題で、初等教育に生じている問題を「職業大学論」でしているわけだ。そもそも読み書き算数があやしくて、最新の高度な技術を学べるのか。日本もゆとり教育が問題になったし、先日も妙な大学改革論が出てきたし、対岸の火事とは言えないが、OECDのレポートにも捩れた部分がある。まっとうな議論と言えるのであろうか。

4. 職業訓練的な教育への需要は限られている可能性

そう言えば企業の求める人材*4についての言及もほとんど無い上に、北欧などでも大卒と比較すると専門学校卒は賃金も低めだ。専門学校への進学率も日本と大差ない。欧米でも職業訓練的な教育への需要は限られていて、専門学校は不人気なのでは無いであろうか。この世から専門職がなくなるわけはないし、専門学校制度改革も必要だと思うが、今や大多数が進学することになった大学を改革するための参考にはならないように思える。

*1P.29 "Labour market outcomes"に、職業訓練学校卒業者は高卒以上、大卒未満の賃金が得られると言うような指摘があり、失業や無業に陥りづらくなると言う指摘がある。

*2以下のように、OECD加盟国に限られるが、他国が心配になる結果が示されている。

なお、日本の職業教育が優れていると言う意味ではない。日本はITリテラシーは中位となっており、表計算の関数が使いこなせていない人の割合が多くなっている(OECD Skills Outlook 2013のFigure 2.10を参照)。

*3統計手法の違いで失業率に差が出ると言う議論もあるが、ILOやOECDで国際基準で比較しても日本が低くなる。

*4日本の企業アンケートを見る限り、語学力やマネジメント力を評価するようにはなっているが、職能を求めているわけでは無いようだ。つまり、即戦力と言いつつ、新卒には即戦力は求めていない。

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