2014年8月4日月曜日

クラウド事業者にも著作権使用料を求めるJASRACの法的根拠

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JASRACがDropboxのようなロッカー型クラウド・サービスにも著作権料の支払いを求める方針が表明され、「人間の背丈よりも巨大なサーバーに個人の領域を遙かに超える容量の蓄積するもので到底私的な利用とは言えない」と言う、コミカルな主張が笑いのツボに入ったらしく、話題になっていた(痛いニュース)。強欲JASRACに感情的な不快感を示している人が多いのだが、そもそも法的にどうなっているのかが気になったので確認してみた。

ロッカー型クラウド・サービスは、インターネットを経由して、ユーザーの電子データを預かるサービスだ。どのような電子データをアップロードするか、さらに私的利用に留めるか、一般公開するかはユーザーの判断で行われる。利用にあたりサービスを支えるハードウェアは目に入らないわけだが、一つの「道具」に過ぎない。そういう面ではHDDレコーダーと同様な「道具」だ。

これを前提に判例を見ると、JASRACの主張には無理がある。2012年11月の最高裁判決によるとデジタル放送専用レコーダーの私的録画補償金支払いはしなくていい(ITMedia*1。録画代行転送サービスの禁止が思いつくかも知れないが*2、サービス提供者が著作物の複製をしており、ユーザーがコピーをしていないと判断されている。カラオケでもカラオケ店側が著作物の配信者と見なされている。

ユーザーが行為主体者になるか否かがポイントだ。上述のようにロッカー型クラウド・サービスのコピーはユーザーが判断し、サービスが中身を感知しないまま行われるし、ユーザー行為に問題がある場合はユーザーが責任を追及されることになっている。プロバイダー責任制限法で、ユーザー特定までの法的煩雑さも以前よりずっと低い。常識的には、JASRACに勝ち目は無いように思える。

しかしJASRACはバカなのかと言うと、実はそうでもない。著作権法30条1項1号の文言からは、公衆用設置自動複製機器の利用は私的なコピーの範囲を超えるようにも解釈できる。これはレンタルCD店に設置されたダビング機を前提にした法律で、著作物のデータを持たなかったユーザーがそれを手に入れられる状況を想定したものであって、著作物のデータを持っているユーザーが利用するロッカー型クラウド・サービスは範囲外に思えるが、解釈の余地は残っている。

素人目にはJASRACが優位とは思えないが、JASRACの使命からすると解釈の余地が無くなるまで法廷闘争を続けるしかないのであろう。そういうわけで、その主張は完全な冗談では無いようだ。なお、もう少しまともな情報を確認したい人は、ジュリスト2月号にある宮下佳之氏の「クラウドと私的利用をめぐる実務上の問題点」を参照されたい。短いページ数だが法曹の言葉で論点を確認できるのは有難い。

*1JASRACの資料には「私的録画補償金」の文字は無く、さすがに過去の判決は検討した上で主張していると思われる。

*2関連記事:録画代行転送サービスの禁止はクラウドを不可能にするか?

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