2012年9月12日水曜日

経済学を無視してアメリカ経済が停滞する理由が語られている

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@wastingtime_LDN氏が「アメリカ経済が停滞する理由」を語っている。サプライ・サイドで景気循環を説明するのは非常識では無いが、色々と問題があるので指摘してみたい。

@wastingtime_LDN氏から見るとノーベル賞経済学者のクルーグマンはただのコメンテーターで、バーナンキFRB議長は標準的な経済学に照らし合わせてメチャクチャらしいので、理解できないであろうし、する気もないだろうけれども。

さて、問題は以下の通り。

  1. 「実際には米国のレバレッジ解消はかなり進んだとのデータもある」とあるが、具体的なデータを引用していない。2012年7月の「米国家計のバランスシート問題の動向」を見る限り、あまり力強い感じではないようだ。
  2. 「リチャードクーが唱える(爆笑)“バランスシート不況”のような状況」とあるが、フォーマルにはフィナンシャル・アクセラレーターとして知られていて*1、バーナンキFRB議長のような著名なマクロ経済学者が理論構築をしてきたもので、一般的なマクロ経済モデルで示される現象だ。「(爆笑)」をつけるようなものではない。
  3. グラフで生産性の低下が示されているが、何で測った生産性かが示されていない。グラフの出所を見ると労働生産性になっている。これはGDPを総労働時間で割ったものになるので、不況になると自動的に低下する。成長トレンドが下がったと言うのであれば、せめて全要素生産性を見るべきであろう*2

ハーバード大学のビジネス・スクールの先生が書いたグラフの元記事の方も資本増加率一定を仮定して、全要素生産性の傾向を労働生産性で代理しているわけで、(3)については辛目な寸評かも知れない。ただしグラフの元記事では、労働生産性の上昇トレンドの下方シフトが、バランスシートの影響を排除する議論は行っていない。

*1バランスシート不況論とフィナンシャル・アクセラレーター」と「マクロ経済ショックが長引くある理由」を参照。

*2日本の長期不況がTFP上昇率の低迷で説明できると言う著名論文Hayashi and Prescott(2002)が存在する。ただしTFPも景気の影響を受ける事には留意する必要がある。

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