2012年8月29日水曜日

貧困って何? ─ オレ様指標を考える

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ある人が日本の貧困の分析をしていて、そこでの貧困定義が気になったので、貧困の定義について考察をしてみた。200年は議論されているが、明確な定義はまだ無い上に、真面目に研究している人がいるので野暮を通りこして無謀なわけだが。それでも考察した結果、贅沢できないのが貧困と定義し、支出額で測った絶対貧困ライン推定するのが実用的に思えた。

1. 貧困を定義する困難性

貧困を定義したり、指標を作ったりするのは困難だ。貧困と言うと飢え死にしそうと言うイメージがあるが、実際のところ、そこまでの貧乏はごく稀だ。途上国でも少ない*1し、日本ではなおさら生活保護があるために飢え死にすることはない*2。だから貧困から富裕まではつながっていて、線引きが難しい。それでも便宜的な指標は作られているが、やはり不備は多い。

2. 収入と支出、どちらで測るべきか?

指標としては実用上、収入か支出、どちらかで貧困と認定している。収入は統計が取りやすいが、支出の方が実態を良く表す。子供から毎月100万円の仕送りを受けている80歳の老人が無職で収入が無いとして、貧困と言えるかと言うと、そうではないからだ。仕送りも収入に入れる事もできるが、やはり1億円の貯金がある資産持ちで所得なしは貧困とは言えない。なお、消費やケーパビリティで貧困定義する方が望ましいが、消費はさらにトレースがしづらく、個々の人間の可能性を評価していくのは実用上は不可能にさえ思える。

3. 絶対的貧困?相対的貧困?

実際のところ、絶対的貧困もしくは相対的貧困を定義して、収入額もしくは支出額で足きりをする*3。ただし問題は多い。

絶対的貧困のケースだが、最低限の栄養等が取れるベーシック・ニーズの費用(CBS)を定義したとしても、一日の生活費が2ドル/日は貧困で、2.1ドル/日はそうでは無いと言うのは説得力が無いように思える。そもそも何がベーシック・ニーズか分から無い。

相対的貧困の場合は、社会の底辺が必ず貧困になるので、所得格差の代理変数でしかない。収入で相対的貧困を測るケースの場合は、計量分析で問題が生じる。特に(相対的貧困ダミー)=Φ(各種収入・β)+εのような推定モデルを立ててしまうと、収入で収入を回帰していることになる問題もある。

どちらかと言うと絶対的貧困が妥当に思えるが、絶対貧困ラインをどう定義するかに課題が残る。

4. オレ様指標:贅沢できないのが貧困

以上の考察を元に、支出額で測った絶対貧困ラインを定義したい。通常はベーシック・ニーズから考えていくが、奢侈品から考えていくアプローチだ。

ミクロ経済学的にも、必需品が足りた後に奢侈品の需要が増えるわけだから、奢侈品(=贅沢)で計測してはいけない理由はないし、実のところは計量分析面でのアドバンテージがある。トービット・モデルを推定に用いれば、分析者が丹念に貧困水準を議論しなくても、打ち切り部分が貧困ラインになるからだ。また、実用的には全員が少しは消費している奢侈品でも、支出に対して弾力性があれば貧困ラインを計測できる便利さもある。

5. 贅沢品は何か?

何が贅沢品になるかは、道徳観の問題になってくる。しかし、そもそも貧困と言う概念そのものが、お節介なコンセプトだ。外食や、旅行や娯楽品などに費やす金額を考えていけば良いと思う。もちろん貧困者にも娯楽が必要であろうが、直線を引いてしまうので、全員に娯楽支出があっても構わない。むしろ娯楽の種類で限定すべきであろうけれども。

6. 高収入で贅沢品を消費していないのは貧困か?

批判される可能性があるので議論しておくが、この分析では選択した贅沢品に支出が可能か否かで貧困を定義しているので、実際に支出をしたか否かでは貧困を定義していない。収入や資産、負債、社会的負担で説明変数の裕福度が構成されており、その裕福度+誤差項で贅沢品の購入額を説明するわけだ。近視眼的だがケーパビリティを見ていると考えても良いであろう。

7. 非経済的要素の統合

性別や所属、はたまた病歴などで特定の財への消費が多くなる可能性は否定できない。しかし、これは支出関数に過ぎないので説明変数に加えることは可能だ。

8. 貧困の認定も行える

推定結果の統計量から、特定の個人が貧困であるかの認定もできる。すなわち予測値がゼロ以下の場合は、実際の支出に関わらず、貧困者だと考えることができる。

9. 言い訳

先行研究のサーベイをしっかりしていないので、同様のアプローチが既にあるか、このアプローチにテクニカルに大きな問題がある可能性があります(´・ω・`)

*1貧乏人の経済学』の第2章を参照。

*2実際には生活保護申請は容易ではないと言われており、制度的な漏れは指摘されている(雨宮処凛Everyone says I love you !)。

*3撲滅すべき貧困と言うのが社会的に知覚されているので、弱点を認識した上で利用されている。

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