2012年2月25日土曜日

ワタミの労働環境がどう変化したかを財務データから推測する

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過労自殺によるコメントに対して強い批判を受けた渡邉美樹氏だが、さすがに批判を受け止める旨の発言をしたようだ。ワタミ(株)のプレス・リリースも「真摯に対応」と、「決定は遺憾」を取り下げた。

渡邉美樹氏が「一層の法令遵守」を宣言した事は歓迎すべきことだが、過労自殺事件後、ワタミでは現場の状況改善を何も行わなかったのではないか、疑念が湧いて来る。

小宮山厚労相がワタミに突撃して実態調査を行ってくれれば良いのだが、政局で忙しいかも知れないので、事件が発生した2008年から現在までのワタミの労働環境が変化していないのか財務データを整理してみた。

現在のワタミ(株)は飲食業、介護業、農業の三事業を展開しており、飲食業の店舗数、販売金額、雇用者数のデータを公開している。社員の平均労働時間や有休取得率などの直接の勤怠データが分かれば良いのだが、公開はされていない。そこで販売金額を全体の労働量と見なし、販売金額/従業員数で一人当たりの業務量の推移を推測してみる事にしよう。

ワタミ(株)一人当たり販売金額推移
年度 販売実績 店舗数 常時雇用 臨時雇用 販売金額
/従業員数
(百万円) (件) (人) (人) (万円)
2011 79,529 646 1,701 8,745 761
2010 87,148 645 2,547 8,842 765
2009 90,648 624 2,440 10,335 710
2008 92,329 620 2,056 9,374 808
2007 90,421 627 2,000 9,962 756
2006 76,775 553 1,842 9,365 685
注意) 臨時雇用者数は、労働時間8時間ごとに1名とカウントしており、実際の臨時雇用者数ではない。また、従業員数は常時雇用と臨時雇用の合算値。

販売金額/従業員数は、リーマン・ショック前の過労自殺発生年が808万円とピークだ。居酒屋の単価が急激に減少したとは聞かないし、店舗数は現在の方が増しているので、全般として各店舗では業務量が減ったことが推測できる。直接の勤怠データが無いので断定ができないが、現在は状況が改善されているようだ。ただし、2006年の水準までは低下していない。

過労自殺事件後に自発的に人員を増加させたかは分からない。販売実績は2008年がピークであり、その後は減少している。2009に大幅に人員を増加させているが、2010年以降は削減されている事から考えると、事業好調につき規模拡大を図ったが、結果としてマクロ経済ショックの影響で不調になっただけとも考えられる。

経営側が主体的に対策を取ったかは良く分からない。2011年を見ると、店舗数・売上ともに2006年より多いが、常時雇用も臨時雇用者も2006年よりも少ない。5年間で業務の効率化が行われていないとは言い切れないが、居酒屋チェーンでどの程度の技術進歩が可能かは疑問が残る。

本来であれば年末の繁忙期と閑散期で社員の労働時間の見積りを作成し、労使で営業日数・営業時間などを交渉すれば良いと思うが、ワタミには労働組合が無いのでそういう事もできない。結局、経営陣の裁量によるところが大きく、経営都合によるモラルハザードを引き起こしがちになる。政治的野心を隠さない渡邉美樹氏の今後に注目したい。

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