ワクチン接種は病気を予防し程度を抑えるモノなので、個人が自己責任ですれば良いと思うかも知れないが、公的に強制もしくは奨励する意義は色々とある。子どもが自分で情報を集めて予防接種するのは無理であろうし、保護者もその重要性に気づかないことが多いであろう。また、全ての人が予防接種ができるわけではない。生まれた瞬間は誰しも無防備だし、虚弱体質でワクチン接種ができない人もいる。だから、免疫力のある個体を増やして流行を抑えることは社会にとって重要だ。しかし、どこの国にもワクチン接種を拒絶する人々は一定数いて、問題になっている。ワクチン接種拒絶者にどう接するべきであろうか。
1. 研究が示す上手な説得方法
ハーバード大学の公衆衛生の専門家であるBarry Bloom教授の話*1によると、子どもの予防接種の場合の話になるが、保護者に科学的事実を教えるだけでは十分ではなく、その伝え方も工夫しないといけないそうだ。教授によると、ワクチン接種が重要な事を伝え、その理由を説明した上で、質問を聞いて答えるのが、押し付けがましいが、研究によると最も効果的らしい。保護者に心配事は無いか質問し、それに応じて助言を与える一方で、どうするべきかは言わないのは、意外にもベストではない。感染症が猛威を振るった時代の記憶が薄れているため、ワクチン接種拒絶者が増えていると教授は考えているそうなのだが、ワクチン接種をしない場合の危険性を強調するのは効果的ではなく、偽科学を批判するのは逆効果な面もあるそうだ。
2. 強制を選択しつつある欧米
温和な説得だけではなく、もう少し高圧的なやり方も出てきている。オーストラリアでは、予防接種を拒否した世帯には、児童手当を支給しないことを決めたそうだ*2。カナダのオタワでも、麻疹ワクチン未接種者が国外から旅行者が運んできた風疹に感染したことから、ワクチン接種を公的サービス受給の条件にすることで強制する動きがあるらしい*3。親が子供を自宅学習にするリスクや、ワクチン接種忌避者のための学校が作られるリスクが危惧されているようだが、世界的には強制力を強めつつあるようだ。米国でも2016年7月からカリフォルニア州では、個人の信念と宗教的理由によるワクチン接種の忌避を違法としている*4。
追記(2019/03/14 11:04):イタリアではワクチン接種が義務化されているだけではなく、未接種で学校に行かせた保護者に罰金が科せられるようになった(BBC News)。さらに、6歳以下の子供は追い返されるようになる。
3. 強制性を緩める日本
ところで日本では、感染症の患者・死者が激減し、医療における個人の意思の尊重がされるようになったためか、1994年に定期接種のワクチンも義務規定から努力義務規定になっており、欧米とは逆行した施策となっている。子宮頚がん対策のHPVワクチン*5の接種も、反対運動に押されて「積極的な勧奨」中止になってしまった*6。
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