リーマンショックからの景気回復が続いている可能性が高いとは言え、2012年末からの第二次安倍政権の経済環境は、特に雇用面で良好であった。有効求人倍率はバブル期の水準であり、完全失業率も20年来の低さになっている。生産年齢人口の減少に関わらず、就業者数も増加している。2015年度の大卒就職率も、記録をとり始めてから最も高い数字である。懸念の財政赤字も2014年4月の消費増税の効果により、大幅な改善となっている。だが、賃金の伸びは低迷している。何故であろうか?
理由は色々と言われているのだが、労働分配率が低下していたりするわけではない。政権別の就業者一人あたり実質GDPの推移を確認してみよう。
増税前の駆け込み需要で瞬間的に上昇する時期はあるのだが、安倍政権の就業者一人あたり実質GDPは野田政権のときと変わらないし、消費増税の影響を無視すれば、2013年第2四半期をピークに低下傾向にある。これは好景気としては異常とも言える状況だ。小泉内閣からの長い好景気では雇用情勢は第二次安倍政権に届かないものの、就業者一人あたり実質GDPは増加した。安倍氏の擁護者は増税が理由で消費が落ちているからGDPが伸びないと言う指摘をしたくなるであろうが、それでは雇用が増えている事を説明できない。
要するに、労働生産性が改善していない。むしろ悪化している。就業者数自体が伸びているので実質GDPは何とか維持されているが、労働参加率の上昇は早かれ遅かれ止まるであろう。先行きは芳しくない。安倍総理は、増税延期と言う景気刺激策を繰り出してきているのだが、これが労働生産性の改善に結びつく理由は、ほとんど無いように思える。仕事が無いことが問題なのではなく、仕事の効率が悪い事が課題だからだ。むしろ増税延期に伴う歳出削減によって均衡財政乗数が負の方向に働き、実質GDPを押し下げる可能性すらある。
追記(2016/06/27 00:45):実は女性の就業率が特に上昇しており、パートタイマー労働者の比率が増えているので、一人あたりの労働時間が減少の影響が大きくなった可能性もある。しかし、毎月勤労統計を確認したところ、平均労働時間は2013年から2015年までは、-1.00%、-0.40%、-0.30%と減ってはいるものの、2000年から2012年まで幾何平均で-0.31%で同様に減っており、平均労働時間が急減しているわけではない。実際に補正係数を作り比較したが、停滞傾向に変わりは無かった。
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