2016年6月24日金曜日

2000年以降の日本のフィリップス曲線

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学部のマクロ経済学でも取り上げられるせいか、ネット界隈でもフィリップス曲線が言及されることは良くある。これはインフレ率*1と失業率の関係を表したグラフで、政策的にインフレ率を上げれば失業率が下がると言う大誤診を引き起こした経済学史的には重要なものだ。

相関を因果と読み誤りやすいので、少なくないマクロ経済学者が注目して欲しくないと思っていると思うが、昨日も言及されているのを見かけたので、あえて最近の日本のデータで確認してみよう。

2000年以降の日本において、インフレ率と失業率の相関関係は観察される。マクロ経済政策に失敗するとこの相関関係が切れるので、良好なマクロ経済環境を表していると思う。なお、エネルギー価格の影響などを排除するためにインフレ率の計算にはコアコアCPIを利用した。消費増税の影響は、2014年4月から2015年3月まで増税後ダミーを立てて回帰分析を行い、そのダミーの係数を使って補正している。

さて、参院選挙前なので、政権別の評価をしよう。

面白い事に、小泉内閣(2001年4月~2006年9月)から第1次安倍政権(2006年9月~2007年9月)のときは、量的緩和がされていて円安が進行した時期なのだが、安定デフレ状態で雇用回復が行われていた。この法則、そもそも観測されないときがある。2008年のリーマンショック後、麻生政権のときに急激に失業率が上昇し、コアコアCPIも低下する。ここからインフレ率と失業率の関係が回復する。民主党政権(2009年Q4~2012年)のときは失業率の低下とインフレ率の上昇が観測され、第2次安倍政権(2012年12月~2016年4月)までその傾向が維持されている。2013年4月の黒田日銀総裁の異次元緩和は、トレンドに影響を与えていない。消費増税も無影響のようだ。

金融政策にアベノミクスと言う大きな変化があったわけだが、数字はそれとは関係なく動いているように思える。

*1もともと経済学者のフィリップスが描いたグラフは、名目賃金上昇率と失業率の関係を見ていた。

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