2021年12月6日月曜日

萌え絵への非難はキャンセルカルチャーの範疇に入らないから

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ネット論客の青識亜論氏が「キャンセルカルチャーをキャンセルするには?――対抗戦略の具体的検討」と言う論考を書いている。女性表現物がフェミニストの非難で撤回や修正に追い込まれないようにするには・・・と言う話なのだが、キャンセルカルチャーの意味を誤解している。

古代ギリシャの陶片追放のように、人間を役職から降ろしたり、職場や共同体から追放するようなことをキャンセルカルチャーといって、発言を訂正させたり、表現物を撤回させたりするのは該当しない。

1. ツイフェミは人格の追放を求めていない

青識亜論氏が論考で言及している二つのうち、千葉県松戸市「ご当地VTuber戸定梨香」の事例は、VTuberが人格だと見做せれば*1キャンセルカルチャーの範囲内と言えるかも知れないが、「温泉むすめ」は設定と絵柄が非難されていたに過ぎない。スポーツ文化ツーリズムアワードの受賞辞退は、ツイフェミが求めていた話ではない。エロティックなマンガを描いていた漫画家の、エロティックではない作品も排除しろと言うような主張はキャンセルカルチャーになると思うが、ネット界隈のツイフェミでもそこまで主張している人は少数だ。

2. 非難を受けての表現物の修正はよくある

フェミニスト活動家の仁藤夢乃が非難*2する前の話なのだが、「温泉むすめ」では玉名ラーメンの食べすぎで下半身に肉がつきスカートがずりあがっていた玉名温泉の御当地キャラ玉名満美が、どうも公認キャラになる前後で凡庸な体型に変更されている。玉名温泉の関係者の誰かが文句をつけた結果だと思うが、その文句をキャンセルカルチャーとは言わない。

「温泉むすめ」は適時、表現を変更していく方針でやっているようだ。表現物にあれこれ注文がつくことは多々あるし、「萌え絵の技法とも言える作画内容にまでケチをつける」ことも特異なことではない。修正や撤回が入ることもある。一般に非難を真に受けるべきかどうかは世相や商売を見て判断されているので、青識亜論氏の論考の趣旨自体は概ね妥当なものだと思うが、キャンセルカルチャーとは言えない。

追記(2021/12/17 23:42):「温泉むすめプロジェクト」公式アカウントから「現地のご要望を受けて、宇奈月明嶺のプロフィールを変更」と言う告知が流れていた。要望を受けて適時変更方針を示すもっと直接的な事例になる。

3. ツイフェミと同じ粗雑な議論

ツイフェミの性差別・性搾取・性的対象化(性的モノ化)と言う用語の使い方もかなり雑なのだが、ツイフェミを非難する表現の自由戦士の青識亜論氏の炎上(と燃やす、火をつける)・反転可能性テスト・キャンセルカルチャーと言う用語の使い方もかなり雑。ツイフェミはジェンダー社会学者あたりに騙されている面もあるのだが、青識亜論氏は独自に乱用しているのでより性質が悪い。

4. そもそもキャンセルカルチャーに賛成していたよね?

ところでキャンセルカルチャーと言えば、青識亜論氏はまさにキャンセルカルチャーと言えるオープンレター*3に賛成しますと言っていたのだが、賛同者にしてもらえないと事を見越した揶揄であるとしても、それへの反省なしにキャンセルカルチャー批判を行おうとしているのは無節操と批判せざるをえない。

追記(2021/12/20 02:11):代わりになる用語が欲しいという要望があったのだが、ツイフェミの女性表現物への非難は検閲カルチャーと呼ぶのが相応しい。政府や業界団体でもないので事後検閲ごっこだが、本気で検閲/規制をしたいようだから、ツイフェミの意図に合う。

*1代表的VTuberのキヅナアイの声優が交替になった事例があるが、作家のペンネームのように“中の人”と不可分であるとは言い難い面があるので、VTuber一般は人格とは認められない。個人がその個人に似せたモデリングを使っている場合や、特定個人を代表していると周知されているものは別であろうが。

*2関連記事:『温泉むすめ』は性差別や性搾取とは言えないし、露出度も高くは無いけれども

*3関連記事:オープンレター「女性差別的な文化を脱するために」は、人格への中傷ではなく、主張への批判に対して、社会的制裁を加えろと呼びかけている

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