2020年7月2日木曜日

東京都の感染者数の拡大は、今のところは検査方針の変更が理由

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6月に入ってからの一ヶ月間、東京都の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者数が緩やかに上昇してきている。3月下旬から4月上旬までのペースと比較すると緩やかだが、直近2週間の数字で基本再生産数R₀の推定を行うと1.793となる*1ので、表面的な数字は深刻だ。しかし、またロックダウンなど強力な規制が必要かと言うと、そうともまだ言えない。

新規陽性者数の推移を見ると、緩やかだが確実に増加をしている。

しかし、「COVID-19 重症患者状況」を参照すると、呼吸管理が必要な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症者数は増えておらず、緩やかに減少を続けている。現状の医療技術では重症化を防げないので、感染者の年齢層や検査状況が同じであれば、重症者数は感染者数に比例すべき数字だ。実際、3月下旬から4月下旬まで急激に増えている。

この二つの相反する統計を説明するものとして、検査方針の変更が挙げられる。5月29日に厚生労働省はPCR検査方針を変更する通達をだし、無症状者を広いやすくなった。発熱37.5℃4日間が条件でないことが確認され、PCR検査がされやすくなった。東京都の運用が実際にどうなっているのか報道は無いのだが、「夜の街」従業員に定期検査する方針が小池都知事と西村経済再生担当相の間で確認されたと、6月7日に報道されている。ここから想像するに、キャバクラやホストクラブなどへの検査体制が拡充された。実際、キャバクラやホストクラブなどでの集団感染が広く報道され、6月に入ってから検査実施件数は拡大しており*2、6月は4月のピーク時よりも多い状態になっている。

こういうわけで、検査方針の変更が、無症状/軽症感染者を多く炙り出すことになったため、確認感染者数を増加させたと言える。感染状況が悪化したとは言えず、まだロックダウンなど強力な規制が必要とは言えない。ただし、検査方針の変更があったと想像される6月上旬からも感染者数は増加ペースであるので、検査方針の変更とは別に市中感染の拡大が起きている可能性もなお残る。経済活動を活発化させているわけで、可能性は排除できない。重症者数が上昇に転じたときは、政策を変える必要が出てくる。

*1関連記事:直近一週間のデータで基本再生産数R₀を推定する方法

*2市中感染が増加すると、検査数も陽性者数も増えることになるので、検査数と陽性者数は内生変数で同時性があり、検査数で陽性者数を説明するとおかしい事になるのには注意されたい。

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