2020年1月30日木曜日

ツイート不正引用騒動に関して、#KuToo 運動の立役者・石川優実さんが心得るべきことと、本当にすべきこと

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フェミニストの石川優実氏が著作『#KuToo(クートゥー): 靴から考える本気のフェミニズム』に引用もしくは転載したツイートに関して、数多くのツイート主などから批判を受けることになり*1精神的に参って死にたくなったと泣き言を言い出した。メンヘラ状態なのは同情するが、石川氏は2つ心得違いをしており、すべき事ができていないように思える。

1. 著作同一権の侵害の可能性

「私は嘘もついてないし法もおかしてない」と自己弁護しているのだが、過去に同様の事例が無いわけで、法律は犯している可能性は無いとも言えないし*2、違法認定されなくても不道徳な行為はやはり批判されても仕方が無い。

著作権には同一性保持権と言うのもあって、著作者の意に反した改変が禁じられている。限定条件を省略したりする文脈無視の切り出しなどをすることにより、著作者が言ってもいない事を捏造したりしたら違法になる。石川氏の著作は、少なくともTwitterのリプライ機能を使われていないツイートを、Twitterのリプライ機能が使われたかのように表記している*3。コメントを付けてリツイートやエア・リプライどころか、#KuTooタグがついているだけの、誰に向けたかも分からない疑問もリプライとして扱っている。リプライは石川優実氏の目に止まることを意識しているわけだが、それ以外のツイートも同等であると見なせるのかと言うと定かではない。つまり、同一性を保持しているかに疑問が出てくる。

De minimis non curat lex(法は些事に関せず)と言うし、裁判になっても違法性が認定される可能性は低いと(法曹ではないので無責任に)思うが、違法にならなくても社会規範は犯している蓋然性は高い。合法であっても女性差別であればフェミニストは批判してきたわけで、同様の論理で批判されると言うか、まさに今がそれ。

不道徳に関連した余談だが、クソリプは侮辱表現。なんせ糞。自分の意見に同意してくれないと言うだけで、投げかけるのは軽率だ*4。今、石川氏は自分で喧嘩を売った相手に責められて泣いている状態だから、ちょっとみっともない。

2. ネット界隈の人々は、石川氏のメンタルや生死に無関心

詰問中に知人や友人の女性が死にたいと泣き出しても、同じように責め続けることができる人間は少数であろう。しかし、今回はインターネットのSNSを介在した不特定多数とのコミュニケーションであって、石川氏とは関係が無い人々が批判している。泣き崩れて同情を請う女、声を荒げて譲歩を迫る男・・・と言うところが古めかしいジェンダー・ロールなのだけれども、「あなたが感情を害していること自体は大した意味がありません」と言うのが関係が過疎な不特定対数の集合体としてのネット界隈の反応になる。メンヘラ気味なのを訴えることに意味はない。

3. 石川優実さんがすべきこと

こういうわけで石川優実氏がすべきことは、泣き落として同情を誘うことではなく、なぜ自分がそのように振舞ったかの説明だ。

リプライ機能を使っていないツイートをリプライだと認識した理由を、文句を言われているツイートひとつひとつに説明していこう。当時、リプライではないツイートも、自分へのリプライだと感じていたのだと思うが、どういう経緯でそう感じたのかを文章にして公表しよう。形式的にはリプライではないが、実質的にリプライと見なせる状況があったと言えれば、リプライではないものをリプライと見なしても、同一性は概ね維持されていると言えるはずだ。悪意が無かったことぐらいは示せる。なお、勢いで書いていてちょっとリプライとは見なせないな・・・と思ったものは、謝罪・訂正したほうがよい*5。出版社の現代書館も訂正表をネットで配るぐらいはしてくれると言うか、するべき責務があるはず。

そんなので納得してもらえない? — ネット社会では自尊心は尊重されないので、実社会と異なり納得して引き下がったフリはしてもらえないわけで、そういう事になるであろう。承認欲求を満たすことを期待するのは諦めよう*6。しかし、投げられたボールは打ち返したわけで、気分はだいぶよくなるはず。強い女を振舞うのは大変だと思うが、たぶん、ここからが本気のフェミニズム。上野千鶴子氏って偉いよね。

*1私の著作物であるツイートが『#KuToo(クートゥー): 靴から考える本気のフェミニズム』に無断で引用されました|みやびmama|note

引用ルールを守っている場合、無断引用は問題ない。また、規約がおかしい場合もあるので、Twitterの引用ルールを破っただけでは違法とは言えない。

追記(2020/01/31 22:45):Twitterの規約にある引用ルールに従っていない、全文を転載していないと言う指摘が出ているが、欧米メディアの報道ではツイートの一部分を引用するケースもあり(e.g. Trump under fire for threat to Iranian cultural sites - BBC News)、それをTwitter社が気づいていないはずはないので、一部分になっている事自体は問題であるかは分からない。

Twitter社、ブランドガイドラインのツイートの表示例などで、他のサービスやアプリケーション中でツイートを表示するときのルールは細かく指示してくれるのだが、書籍やブログなどでの評論のための引用については明確な規定が無いようであるし、NHK「NEWS WEB」あたりは規約に沿わない表示をしているが、特にTwitter社から苦情は来ていないようである。

*2吉峯弁護士はもっと明快にリスクを指摘している(#KuToo 本に対する吉峯弁護士の法的な見解 - Togetter)。

*3編集上の都合で改変・削除したらしき部分があるのだが、ここは「原文ママ」にしてそのまま出すか、脚注で元の文を示しておくべきだった。

*4反論や批判ではなく、侮辱や名誉毀損、噛み合っていない会話にあたる内容であればクソリプと言えるが、それでも言われた方は気分を害する可能性がある。

*5「原文ママ」になっていないところは、現代書館の編集者の責任が大きいので、現代書館に謝らせてもよいと思う。なお、リプライと見なせないものが入っていた場合は、大量の反響があり興奮状態で空目をしたと謝罪すれば、半分ぐらいの人は呆れて放置してくれると思う。

*6私は勇気に賞賛を送ると思うが、ゴミクズに褒められても嬉しくないであろう。今後はこういう事態に陥らないためのノウハウをかみ締めて欲しい(関連記事:ネットで心が折れないための10の作文技法)。

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