2019年11月3日日曜日

昭和な数学随筆『トポロジー入門 奇妙な図形のからくり』

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講談社ブルーバックスが、1974年刊行の『トポロジー入門』(日科技連出版社)の復刻版『トポロジー入門 奇妙な図形のからくり』を今年になって出したのだが、拝読してみたので感想を記しておきたい。なぜか書評を求められたので。悪い本ではないと思うが、初学者向けの紹介本と言うよりは、昭和を懐かしむ何かになっている。

本書は、定理に証明を与えてはいかないざっくり読んでよ…と言う類の教科書と言うよりは紹介書で、(言及自体はある)ホモロジーなど代数的トポロジーに入る前の図形と四則演算であれこれ説明できる部分までの位相幾何学の内容と、やや脱線気味にグラフ理論についての紹介がされている。初学者が読んだらいけない事は無いし、テキストを読んだ事がある人でも「こういう話があったな~」と復習になると思うが、よく考えるとモヤモヤする部分はあるであろう。私は分けて使われる位相の「位」と「相」の違いがイマイチ掴めなかった。全単射と連続写像が対応しているような、箇所によっては違う意味で使われているような…射影平面の説明も何だかちょっと違うような気も*1(´・ω・`)ショボーン

時代を感じさせる部分が各所にある。学生に鉄道マニアが多い時代を反映してか路線図の話で掴もうとするのだが、言及されている鉄道連絡船はもう無い。古臭く感じるだけではなく、場合によっては誤解を持つかも知れない。執筆時点ではそうであったため、四色問題とフェルマーの最終定理が未解決と説明されている。サーストンの幾何化予想(≒ポアンカレ予想)の解決も、たぶん反映した方が良い記述がある(p.225)。また、カタストロフィー理論について大きな期待が寄せられているが、現状では大当たりせず終息気味な気が。

復刻にあたって冒頭ついた解説では、数学の定理は風化するものではないとあるが、数学に関する随筆は風化することもあると言うことが分かる。もちろん、故人である著者には何の責任も無い話であるが。せめて旧くなった情報には、復刻に当たっての注釈を入れて欲しかった。ところで、ひとつつまらない誤植がある*2

*1「図のP1とP2の2点は、同一無限遠点に射影されることになる」(p.221)と説明があるのだが、何か奇妙だ。射影平面は原点を通る直線の集合で定義されるので、原点O(光源)を通る直線P1P2を考えたとき、OP1とOP2は同一と見なされ、射影平面を平面に対応させた(光源と半球上の点を結ぶ直線と二次元平面上の点を対応させた)ときは、平面の反対方向の2つの無限遠点が同一のP1P2に対応することになるのでは無いであろうか。

*2p.233の「3n重積分」の3は不要であろう。

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