2019年6月5日水曜日

MMT教祖Mitchellの日本経済への理解はこんな程度

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話題の非主流派経済学MMTの教祖や信奉者から日本の過去20年間の経験がMMTが正しいことを実証しているような言説をちょくちょくと聞くのだが*1、MMTの教祖たちの日本経済への理解はかなり雑なので真に受けてはいけない。

例えばMMTの命名者で教祖の一人Bill Mitchell氏のあるエントリー*2では、以下のグラフで財政再建のために消費税率を上げると実質経済成長率が落ちると言う議論をしている。

1997年ではなく1998年に消費税率が上がったことになっている*3し、1989年の消費税導入は無視されている。

解釈も雑で、他にも考慮されるべき所得税率や法人税率の変化*4、消費税率引き上げ前の駆け込み需要やその反動についての言及が無い。社会保険料の上昇や、家計消費に医療費など政府から個人への移転である家計現物社会移転受取を加えた現実家計最終消費と言うものがある*5ことすら知らない可能性もありそうだ。1997年も2014年もその後の財政刺激策によって経済成長率は急回復したと書いてある*6のだが、2014年以降に大きな財政刺激策は無いので事実誤認もある。

そもそもMMTは雇用重視で経済成長もしくは資本蓄積を議論していない*7のだから、見るべき指標を間違えている。2014年の消費税率引き上げ後、雇用指標は変わらず改善していったのだが、MMTではそれをどう説明するのか?

なお、このグラフとエントリーへのリンクは話題のMMT信奉者のケルトン女史も無批判にツイートしており*8、日本経済への無関心さはBill Mitchellだけの問題でないことがわかる。日本経済をみてMMTが正しいと思ったと言っていた気がするのは、記憶違いなのであろう。

*1ただしその論理は詭弁に近い。“主流派”が日本経済をよく説明しないから、MMTが正しいと主張していることが多いのだが、 “主流派”とMMTの両方が間違っている可能性も残る。加えて、そもそも“主流派”のどの理論モデルを指しているのか判然とせず、藁人形論法になっている。なお、財政赤字が続いているのにインフレーションやそれを予測した高金利が生じないのは、(将来の増税や歳出削減への予想で説明してしまうと科学的検証が不可能と言う批判もあるが)FTPLのリカード家計のケースや長期停滞論で説明ができる。

*2Japan Finance Minister getting paranoid about MMT — Bill Mitchell — Modern Monetary Theory

*3単なる勘違いな気もするが、この誤りを訂正すると、消費税増税後、経済成長率がマイナスになるのが1年遅れと同時になり、ずいぶんとタイミングが異なることになり、1998年のマイナス成長はアジア通貨危機の影響である蓋然性が増す。

*41997年のときは法人減税、所得減税が先行して行われている(関連記事:消費税率引き上げの影響試算に抜けている視点)。租税負担率に大きな変化は無い。

*5関連記事:景気がよいのに、消費が伸びていない問題

*6"In both episodes, these recessions were followed by a renewed bout of fiscal stimulus (monetary policy was ‘loose’ throughout) ... there was a rapid return to sustained growth as a result of the fiscal boost."とある。

*7教祖Tymoigneのブログのエントリーに"Money and Banking Part 12: Economic Growth and the Financial System"と言うのがあって、そこのThe Monetary Production Economy (MPE)の節を読むと、家計や企業には流動性制約があるので政府が財政赤字を出すことで流動性を供給してやることで経済成長が促されると言いたそうな気もするのだが、はっきりは書いていない。

*8以下のツイートである。

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