2019年1月29日火曜日

景気がよいのに、消費が伸びていない問題

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消費税率引き上げ後も雇用情勢から景気はよいと言えるのだが、家計消費が減っていると言う話がある*1。減っていると言うのは増税前の駆け込み消費が増えた2013年度と比較してのことで誇大広告論法になっていると思うが、2012年度以降、実質消費が微増にとどまっているのは確かだ*2。もっともこれは高齢化の影響で、医療費など政府から個人への移転である家計現物社会移転受取を加えた現実家計最終消費をみると増えている(下図)。

こう言う風に心配するに及ばないと思っていたのだが、現実家計最終消費も増加トレンドが下方シフトしているのではないかと言う指摘があった。

実際にプロットしてみると*3、高齢化の影響をコントロールしても、実質GDP比の割には家計最終消費支出も現実家計最終消費も伸びていない(上図)。しかし、これもそんなに異常とは言えない。実質GDPに占める消費の割合の経年変化をみてみると、景気がよいときの方が消費が弱くなる傾向に気付く(下図)。

1996年~1997年度、2003年~2007年度、2013年~2017年度は景気がよかったが、GDP比消費は減少している。1998年度~2002年度、2008年~2012年度は不況であるが、GDP比消費は拡大している。2013年が好景気かつGDP比消費が高いが、これは増税前の駆け込み需要が理由であろう。いわゆる恒常所得仮説と言うもので、今は景気が良くても、将来、不景気になる可能性があるわけで、人々はそうは消費は増やさない。

経済成長に伴う好景気であれば、将来も所得増加が期待できるので話は別であろうが、単なる景気循環であれば消費の拡大は限定される。なお、家計調査の勤労世帯の家計黒字率を見ると*4、2001年と2006年と2017年が同じ程度で高く、景気と消費の関係は不明瞭になるが、異常なほど貯蓄熱心とは言えないことは同じである。

消費の低迷を嘆いている業界は多いと思う。人口動態によって需要の方向性が変化しているからだ。1994年10月は約14%に過ぎなかった65歳以上の人口は、2017年10月には約28%になっている。20代の人口は約15%だったのが、約10%だ*5。人口動態の影響は大きく、マクロで見た消費パターンもかわってくる。若い頃は耐久消費財を買ったり遊行を楽しんでいた人々が、年老いて入院したり介護の世話になったりするようになるわけで、医療・介護サービスの需要が増していく一方で、既存産業は全般的に消費低迷に悩まされることになる。しかし、人口動態にあわせてなるようになっているだけで、金融政策や財政政策が不適切な結果と見るのは無理がある。

*1ネット界隈で見かけるのだが、日本共産党の小池晃書記局長も「消費税を8%に上げて以来、家計消費は月2万円も減っている」と言っている。

*2持ち家の帰属家賃を除くと、消費低迷感がさらに増す。

*3一人あたりの値に直してトレンド線をひいたら結論が変わるのではないかと言う話もあったのだが、そうするとむしろ消費低迷自体が大したことがなくなる。

*4貯蓄率減少は本当なの? 家計の貯蓄率をグラフ化してみる(最新) - ガベージニュース

*5関連記事:「若者の海外旅行離れ」を検証してみた

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