2019年4月14日日曜日

編集部が作者が意図しないジェンダー・ステレオタイプな表現をチェックすることはアリ

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漫画家の楠本まき氏が、少女マンガの多くが作者が意識せずジェンダー・ステレオタイプに影響されており、そういう作品を読んだ読者のジェンダー・ステレオタイプを強化しているので、編集部がガイドラインをつくって作品をチェックすることで、作中人物を意図せず何となく描いたジェンダー・ステレオタイプに囚われた表現を抑制しようと主張している*1のだが、ネット界隈の表現自由派から批判を受けている。

採用選考などにおける差別を連想させるジェンダー・バイアスと言う単語を使われると意図が取りづらく、対談記事のタイトル及び楠本まき氏が「赤白つるばみ・裏」の登場人物に語らせた主張が過激なのでネット界隈の表現自由派の反感を買っているようだ。社会構築主義、洗脳論と批判されている。確かにマンガが読者に与える影響を過大評価しているきらいはある*2のだが、施策自体は一顧する価値はあるように思える。

楠本まき氏の提案、表現規制と言えるほどでは無いからだ。編集部が考えがあっての人物描写なのか作者に聞くだけで、「その人が本当に信念を持ってそう思っているのであれば、私は嫌ですが、仕方がない」と主張している。過剰に規制しだす可能性が無いわけではないが、商業雑誌の編集部でやっている限りは人気作品の内容を大きく変える事は無いであろうし、新作も過去作品に習うことになるので、チェックが有名無実化する可能性の方が高い。しかし、人物設定がしっかりするのは悪いことではないであろう。

意味のあるチェックリストを作れるのかは疑問はある。現実世界に性別役割分担がある以上、ジェンダー・ステレオタイプを排除した創作物を作るのは難しい。あまり現実から乖離してしまうと、読者がリアリティを感じず作品に没頭できなくなったり、登場人物に親近感もしくは不快感をもてないはずだ。実際問題、恋愛をテーマにした作品が多いわけで*3、プロットが書けなくなる可能性もある。

女の子の頭の中が恋愛一色と言う前提がジェンダー・ステレオタイプなので、まずはそこから直せと言う話なのかも知れないが、非恋愛脳の女性オタは少年誌、青年誌を愛読している。最近の少年マンガはファンタジー要素が強くなったせいか性別役割分担は曖昧で*4、(米ドラマなどもそうだが)往々にして男女の筋力差など無いかのような話が展開されており、ジェンダー格差を否定する異世界だらけになっているが、そんな作品ばかりでよいのかと思わなくも無い。

*1「ジェンダーバイアスのかかった漫画は滅びればいい」。漫画家・楠本まきはなぜ登場人物にこう語らせたのか | ハフポスト

*2関連記事:「幸色のワンルーム」で青年と少女の認知は歪まない

*3「りぼん」の連載中のマンガをざっと見た。

*4少なくない作品で主人公を中心にハーレムが形成されて、人間と言うよりはトドの社会に近くなっていることが多いが、ジェンダー・ステレオタイプと違う問題だと思うので議論しない。

1 コメント:

Noé さんのコメント...

やはり色んなバイアスのかかった作品を読みたいと思いますね
バイアスのかかっていない作品などないわけですし、
女性が家事をしてようが、車のメンテをしてようが面白ければいい
だからこそ選択肢を増やすという意味で編集者がステレオタイプに口をだすのは面白い作品の手助けになるかもしれない

初めてこのブログに訪れましたが面白いですね

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