2019年1月5日土曜日

父親も産休をとれるようにすると、母親の就業が支援されて、次の子どもがつくられにくくなる

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男女共同参画で出生率向上のようなことを言い出す人がいる。女性が外部労働に従事すると出産・育児が難しくなるのだが、欧米では様々な制度によって両立させていると言うのがその主な論拠だ。しかし、自然実験をつかった統計的因果分析によると、男女共同参画を狙った制度が出生率を低下させることもある。これを指摘するFarré and González (2018)*1が話題になっていた。

スペインでは以前から産休および短縮勤務を夫婦どちらかが取れるようになっていたのだが、主に女性が利用する制度であった。しかし、2007年3月24日に、それらに加えて家計を主に支える男性が取りやすい13日間(2017年に4週間,2018年に5週間に延長)の産休制度が設けられ、実際に多くの男性が利用するようになった。3月23日に産まれた子どもの保護者は利用できないが、3月24日に産まれた子どもの保護者は利用できる、経済学者が泣いて喜ぶ乱暴な制度導入である。なお、スペインの学年は12月31日で変わる*2ので、研究者にとって良い感じに中途半端な境界。

何で喜ぶのかと言うと、不連続回帰デザインが使えるから。出生率や出産間隔のように刻々と変化する統計の場合、制度導入がされた後に数字が変化しても、その制度導入によって変化したのか、他の要因によるものなのかわからない。しかし、ある制度導入される直前と直後の統計であれば、他の要因は同一とみなすことができる。(論文では言及は無かったが)賢い人々が意図的に制度導入後に出産をずらすような事をする可能性もあるにはあるが、確実に妊娠する方法もないし、早産などのリスクもあるので、制度導入前後を予定日とすることは無いであろう。

さて、Farré and González (2018)では、スペインの新たな育児休暇制度の導入前後に出産した母親が、次に子どもを持つまでの期間、出産後2年間で子どもを持つ比率、出産後6ヶ月で就業している比率を、不連続回帰デザインで比較分析した。次に子どもを持つまでの期間は伸び、出産後2年間で次の子どもを持つ比率は下がり、出産後6ヶ月で就業している比率は統計的に有意に上がっている。著者らの考察によると、父親が育児休暇をとることにより母親の就業が容易になり、母親の就業が次の子どもを持つ機会費用を引き上げたためだそうだ。また、父親が次子を持ちたがらなくなるので、父親が育児の大変さを知ったための可能性もある。

高々13日間の育児休暇で何が変わるのか謎だが、おそらく職探しが容易になるのであろう。なお、技術的には、前後7日~90日で分析してoptimal bandwidth selectorで前後7日で分断回帰をする、シーズナル・バイアスの可能性があるので2006年を対照群・2008年を処置群としたDIDで矛盾した結果は無いことなどを確認したりと色々やっていて、見た感じでは大きな粗は無かった。しかし、日本ではこんな乱暴な制度導入はできないであろう。学年で扱いを変えてしまいそうだ。ラテン系、すごい(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

*1Does Paternity Leave Reduce Fertility? | IZA - Institute of Labor Economics

*2外務省「諸外国・地域の学校情報(国・地域の詳細情報)」に「その年の12月31日までに満6歳になる者は、その年の9月第2週に義務教育の第1学年に入学する」とある。

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