2018年8月11日土曜日

大学の男女別定員は違憲・違法か?

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東京医科大学が隠れて実質的な男女別定員制をとっていた件に関して、明らかに違憲・違法と言う非難が見られる*1のだが、素人目にも雑すぎる法律解釈なので問題を指摘したい。道徳的に主張の正当化を行なうより、違憲・違法と叫ぶ方が簡単なのは分からなくもないのだが、憲法や法律の運用状況から考えると、問題は自明ではない。

1. 公序良俗に反さなければ合法

憲法14条1は私人に対して直接適用されるものではなく*2、判例では民法90条で公序良俗に反するか否かが問題になる。教育基本法の第4条も教育の目的及び理念を示したもので、個々の大学の学生募集に直接適用できるものではない。大学の男女別定員は違法であっても違憲にはならないし、違法か否かも他の諸事情を加味して公序良俗に反するか否かが問題になる。この判断が難しいのだが、社会的には保守的に行われて来た。

2. 公序良俗に反さないと見なされる例は幅広い

学問の自由、転じて教育の自由は広く認められており、公平性に欠ける事が直ちに問題とはされていない。医大入試の出身高校地域枠は出身地差別であり*3、私大医学部の高額な学費は経済的地位による教育差別になっているが、問題にはされていない。男子校や女子校の設立や、都立高校などで実施されている男女別定員も同様だ*4。指定校推薦も、一般入試よりも低い学力で入学が許されるわけで、社会的関係による差別があるとも言えるが、特に疑われず運用されてきた。

3. 男女別定員に合理性は認められないか?

男女別定員に何らかの合理性*5がある限りにおいて、公序良俗に反さないと定義することも可能ではある。しかし、現在の社会状況で考えて、男子校、女子高、高校の男女別定員にどれほどの合理性があると言えるであろうか。女子生徒の学力や進学率が上昇した結果、もしくは性役割の変化によって、女子大の当初の意義が既に失われたという指摘もある。弱い理屈でも、合理性があると認めざるを得ないであろう。むしろ、医療現場で女性医師が増える事による弊害は国内外から指摘されており*6、医学部入試の女性差別は(帰結主義的に)公益性が強いとも言える。

4. 癪に障る人は、男女別定員を禁止する法律の制定を目指そう

医師不足を理由にした出身地による差別が合理的とされる入試で、医療現場の状況を鑑みた性別による統計差別は公序良俗に反すると言えるのであろうか。最後は裁判官次第ではあるのだが、憲法や法律は何も規定していないに等しい状況であり、現在までは判例が無いのでどう解釈されるのかは自明ではない。癪に障る人は多いと思うが、違法と言いたいのであれば、教育機関の男女別定員を禁止する法律の制定を目指そう。そのためのロビイング活動は、決して違法ではない。

*1RIETI - 東京医科大学の入試における女性差別と関連事実 ― 今政府は何をすべきか

*2衆議院憲法調査会事務局 (2004)『「法の下の平等(平等原則に関する重要問題~1票の格差の問題、非嫡出子相続分等 企業と人権に関する議論を含む)」』衆憲資第 38 号, pp.46--49

*3医学部地域枠推薦は、卒業後、一定期間指定された病院で勤務することが義務付けられるだけのものは差別とは言えないが、何らかの形で出身地域を制限しているものもある。なお、憲法14条1には地域が明言されていないが、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により」は例であって、「政治的、経済的又は社会的関係」を制限しないと解釈されている。

*4中高と大学は異なると思うかも知れないが、法律の文面からは両者を分けるべき理由は無いし、過去には男子大学も存在するし、大阪電気通信大学が公募推薦入試で女子に加点をしている。

*5経済学で言う合理性ではなく、裁判官が公序良俗に反さない理屈があると認めると言う意味での合理性。

*6Part-time women doctors are creating a timebomb - Telegraph

英国(他、米国、カナダ、欧州、日本)では、女性医師が家族を優先してパートタイマーになり、平均すると男性医師と比較して労働時間が短めになる一方、夜間・当直や緊急呼び出しのある部局を避ける傾向があり、将来的な問題になると指摘している。

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