2018年7月24日火曜日

杉田水脈衆院議員のLGBT支援に関する寄稿は優生思想によるものではない

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週刊誌「新潮45」に掲載された杉田水脈衆院議員の性的少数者(LGBT)に関する寄稿が、「LGBTのカップルに『生産性』が無い」という稚拙な言い回し*1で火がついて、優生思想だと紋切り型の非難に晒されている*2のだが、よく考えると優生思想に沿ったものではないので指摘したい。単なる理屈をつけるのが下手な保守である。

1. 優生思想から杉田水脈氏の主張は肯定されない

杉田氏の言う『生産性』は残す子孫の数であるが、それで優劣を測るのは優生思想とかけ離れた発想だ。優生思想、もしくは優生学は病気の予防や克服のために、遺伝的な虚弱体質の広まりを阻止しようと言うものである*3。優生思想に従えば、壮健と言う意味で優秀な人間は子孫を残すべきであっても、子孫を残した人間が優秀とはならない。仮に子供を残さないことが多いLGBT*4が遺伝的な疾患であるとしても、定義的に遺伝的血統改良が行なわれるので、優生思想からは無問題となる。

2. 独自定義の『生産性』は失敗した詭弁

もちろん『生産性』と言う単語の選択はよくない。納税能力と言っている人は、租税負担から他の世帯の養育に間接的に役立つと言いたかったかも知れないが、労働生産性と誤解したコメントが多々ついていた。資本主義社会の宿命か、「生産性がない」が状態の描写ではなく、単なる罵倒語になっている昨今だが、杉田氏の弁は「生産性がない」と言うレッテルをLGBTの人々に貼り付ける事で、LGBTにネガティブな印象を与えようとする説得的定義と言う詭弁になっている。誰も詭弁に騙されていないと言うか、それで主張の概要すら受け止めてもらえていない悲哀があるのだが。

3. 本当の問いはLGBT支援事業の意義

杉田水脈氏の主張を要約してみよう*5。『LGBTの「生きづらさ」の解消のために政府や地方自治体が動くと直接・間接に経費がかかるが、その経費に見合った政策効果が得られない』で良さそうだ。差別解消を目的とした啓蒙活動は他にもやっているのに、なぜ子育てや不妊治療への支援と比較したのか疑問は残るが、戦後の典型的な家庭像からの逸脱を許容する事に意義を見出せないのが分かる。

杉田氏が異常と言うわけではない。LGBTを許容したくない人々は杉田氏の他にもかなりいて、特に50代以上では不寛容な傾向がある*6。杉田氏の言説は、保守思想が妙な形で出たものだ。アドホックな『生産性』の使い方と言う表面的な粗を、優生思想だなんて良くわかっていないレッテル貼りで杉田氏を非難することで、杉田氏の主張の本質部分を批判するのを怠っていて良いのであろうか。

4. LGBT支援事業の意義を推進者は説明すべき

LGBT対策費は場合によっては多額になる。身体障害者等へと同様に、LGBTの人々を揶揄したりしないように学校教育で啓蒙するぐらいならば追加的な費用は少ないであろうが、トイレや更衣室や銭湯の問題などを解決しようとすると相応の負担が生じる。どこまでやるかは意見が分かれそうだが、徹底して行なうには「身体的な性と性自認が一致しない人々が不愉快な思いをするからと言って、そんな多額の出費は認められない。身体障害者のためのバリアフリー化や小・中学校へのエアコン設置が優先だ」と言う保守の爺さん婆さん連中を説得する理屈を用意しなければならない。LGBT擁護派の皆さん、それが面倒だからと言って、雑な杉田水脈叩きに満足していないであろうか?

*1「安倍総理夫妻の生産性はゼロか?」と言うようなツッコミがついていた。子どもを三人ぐらい産んでから出て来いとも言われそうである。

*2杉田水脈議員のLGBT寄稿、自民党は「個人としてのものとして理解」

*3関連記事:「優生学と人間社会」を読んで左派のレッテル貼りを検証したら

*4Black, Sanders and Taylor (2007) "The Economics of Lesbian and Gay Families," に米国の事情についてあれこれ書いてある。

*5実は、以前から同じような事を言っている(杉田 水脈(すぎた みお) 公式ブログ : LGBT支援策が必要でない理由〜私の考え)。

*6同性婚「賛成」51% 全国調査、世代間の認識に差  :日本経済新聞

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