2018年5月4日金曜日

在韓米軍撤退は、韓国世論次第

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南北平和協定締結後、在韓米軍が撤退すると読める文正仁大統領統一外交安保特別補佐官の寄稿が韓国で問題になり、文在寅大統領が即座に否定することになった*1。文正仁氏は延世大名誉特任教授でもあり政府から給料を貰わない相談役に過ぎないので政府見解とは違うものだが*2、韓国世論は在韓米軍撤退の可能性を多かれ少なかれ感じているのか無視できないようだ。

1. 全く無根拠な選択肢ではない

理由は二つある。一つは、文在寅大統領は否定するものの、北朝鮮が在韓米軍の撤退を求めている可能性が高い。3月14日、朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は、在韓米軍の撤収を韓国国民が望んでいると主張した*3。勿論、北朝鮮がそう望んでいると言う意志表明である。一つは、在韓米軍の戦術的重要性がかなり低下している事実である。韓国と北朝鮮の軍事バランスが大きく韓国に傾いており、通常兵器に限れば韓国が北朝鮮に短期間で負ける可能性はほぼ無い。航空支援は在日米軍で可能であるし、陸上部隊も戦端が開いた後に米本土から移動すれば間に合う。実際、在韓米軍は段階的に縮小されている。

2. 在韓米軍撤退は米朝韓それぞれに利益

核兵器/弾道ミサイルを放棄と在韓米軍撤退の取引は、米朝韓三者それぞれに利益がある。米国にとっては、世界戦略上、重要性の低い基地を畳む事ができる。北朝鮮からすれば、米韓に屈服したのではなく、在韓米軍撤退を勝ち取ったと自身の面子を立てることができる。中国が北朝鮮の安全を保障してくれていれば、米韓に侵略される恐れも無い。韓国にとってみれば、一発でも対処に失敗すると壊滅的な打撃を受ける核兵器の攻撃の可能性を無くす事ができ、紛争になれば必ず勝てる状況を作り出す事ができる。日本とロシアの国益にも叶うので、米朝韓が文句を言われる可能性も無い。

3. 韓国国民の受け止め方がリスク

さっさとこの取引をまとめれば良いように思えるが、大きな障害がある。韓国の国民感情だ。戦術的に韓国に駐留する米軍が不要でも、在韓米軍の存在は北朝鮮への自動反撃を保証している。米韓相互防衛条約が残るにしても、米国に切り捨てられたと言う理解がされるかも知れない。韓国世論の反対を押し切って米軍が撤退すれば、他の米国の同盟国に動揺が走るであろう。また、経済だけではなく安全保障でも中国を頼ろうとする世論も生じうる。すると資本・自由主義陣営の後退を招くので米国の世界戦略に合致しない事になる。

4. 世論調査の結果が注目される

交渉ごとなので文在寅大統領が早期に在韓米軍撤退を示唆することは無いと思うが、交渉の切り札として米韓が北朝鮮に提示する可能性はある。実際、トランプ大統領は在韓米軍撤退を禁忌とは考えていないようだ*4。米国はソ連のミサイルをキューバから撤去をさせるために、トルコの核ミサイルを撤収しており、譲歩しないと言うわけでもない。今のメディアの論調から行くと、文在寅大統領が上手く世論を誘導できないとご破算になるわけだが、だからこそ文正仁氏に“観測気球”を上げさせて様子を見ているのかも知れない。今回の騒動で、在韓米軍撤退の是非が韓国の世論調査で聞かれることになるだろう。

色々と楽しみなので、本当は非核化に応じる気がなくても、金正恩氏にはもう少し猫を被っていてもらいたい。

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